女性の年金「月10.5万円」…「日本の貧困者の約5人に1人が高齢女性」もある意味“当然”の社会構造
ここ30年間で「犯罪者」のイメージは様変わりしました。男性受刑者が著しく減少する一方で、女性受刑者は高止まり傾向にあり、中でも「65歳以上の女性」の割合は30余年で10倍と激増。犯罪に走った理由は人それぞれですが、生きづらさから逃げる道や場所が「刑務所」になっている実態があります。「塀の中のおばあさん」を減らすには、女性を取り巻く社会構造や、社会保障の仕組みを見直すことが欠かせません。ジャーナリスト・猪熊律子氏の著書『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。
女性受刑者の犯罪理由に多く挙がった「経済的困難」
本稿では、女性が経済的困難に陥りがちな理由を考えてみたい。著書『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』で紹介した受刑者のインタビューでは、「経済不安」「節約」「生活困窮」を犯罪の理由に挙げる人が多かった。経済的な自立ができていれば、他人に依存し、犯罪に巻き込まれるリスクを減らせる可能性がある。
育児・家事・介護などの家庭責任を負うため、就業継続が困難
女性が低賃金・低年金になりがちな理由のひとつに、育児や家事、介護などの家庭責任を負いやすく、そのために就業継続が難しい点が挙げられる。 国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査〈夫婦調査〉(第1子の出生年が2015-2019年)」によれば、長年、4割前後で推移していた第1子出産後も就業を継続した女性の割合は、69.5%にまで上昇した。育児休業や保育所の整備・拡充がこの背景にあるとみられ、特に正社員として働く女性は、育児休業制度を利用してそのまま就業を継続するケースが目立つ。 他方、正社員の就業継続率が83.4%なのに対し、パートや派遣などの非正規労働者の割合は40.3%と、大きな差がある。非正規として働く場合は、出産後、労働市場から離れてしまう傾向が見られた。 離職の理由は様々だが、妊娠・出産を機に離職した女性を対象としたアンケート(明治安田生活福祉研究所「出産・子育てに関する調査」、2018年6月)では、「子育てをしながら仕事を続けるのは大変だったから」という理由が一番多かった。仕事と子育ての両立への負担が、女性の就業継続の大きな壁となっていることがうかがえる。 令和3年版男女共同参画白書によると、6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間(週全体平均)は徐々に増えてきたものの、妻と比べるとその差は明らかなままだ。2016年の調査では、共働き世帯の夫の1日あたりの家事・育児関連時間は82分なのに対し、妻は365分となっている。