自民党執行部の“二重処分”に不満の声も… 苦境の「裏金議員」が法的な救済策を求めることはできる?
一部では“二重処分”批判も…
ただ、裏金問題について関与した議員らは、すでに自民党内での処分を受けている。そのうえで、今回の選挙で非公認などの“処分”を科すのは“二重処分”にあたり許されないのではないかという一部議員や支持者らの声も報じられている。 これについて、三葛弁護士は「二重処分には当たらない」として、理由を以下のように説明する。 「確かに、裏金議員に対する党員資格停止や党の役職停止といった処遇は、たとえば会社でいう出勤停止や戒告といった処分と同様、組織内での処分と言えます。さらにそういった処分を追加するとなると、二重処分にあたり許されないとも考えられます。 しかしながら、候補者を公認するかどうか、比例名簿に掲載するかどうかは、政党の考え方や戦略によって決められるものであり、公認されないということは『処分』ですらありません。 ですので、二重処分というよりも、今回の問題についての党員資格停止といった過去の処分が、公認や比例重複を認めないという執行部の戦略的判断にも反映されたというべきでしょう」
仮に裁判が起きても「裁判所が判断したがらない」
ここまでの説明を聞くと、裏金議員が自民党を訴える可能性は低そうに思える。三葛弁護士は「もし、あり得るとすれば」として、以下のケースをあげた。 「『選考過程において、執行部の事実誤認があり公認が認められなかった』と訴えることが考えられます。ただ、仮に事実誤認が認められたとしても、後の祭りになってしまうでしょう。 『公認』は、当選や議員の立場を確約するものではありません。同様に、比例選挙の場合も、立候補して名簿に掲載されれば、当選する可能性は高まるかもしれませんが、当選するとイコールではありません。 したがって、非公認や比例重複を認めないという“措置”が、事実誤認に基づいた判断であったと認められたとしても、そのことを理由に、たとえば『議員の任期分の報酬』を請求できるかというと、難しいのではないでしょうか」 さらに、三葛弁護士は「仮に裁判を起こしたとしても、裁判所が判断したがらないのではないか」と推察する。 「先ほども述べた通り、司法の場でなにか救済を求めるというのは難しいと思いますし、政党の中の価値判断や、政治闘争のようなところに、司法が入っていくのは違和感があります。 たとえば、選挙で票の取りまとめのためにお金が配られたとか、そういった不正であれば司法の判断はもちろんあり得ます。 ですが、それ以前の、民主主義の過程そのものに対し司法が入っていくのは許されるべきでないと思います。 逆のケースを考えてみるとわかりやすいかもしれません。 『あの議員が選挙の際に公認を受けたのは間違っている。だから公認が無かったものとすべきだ』という訴訟が起こされたとして、もし裁判所が『公認を受けていなければ、この議員はこれぐらいまで得票数が落ちるはずだから、落選したものとする』と判断するような事態になれば、おかしなことになってしまいます」