競合の末、楽天が指名権を獲得した宗山塁 photograph by JIJI PRESS

10月24日に行われた2024年のドラフト会議。日本ハム、巨人、中日で通算2120安打を放ち、指導者としても同3球団に携わった小笠原道大氏は、今年のドラフトをどう見たのか？　全12球団の指名を評価してもらった。《パ・リーグ編/全3回》 【貴重写真】「まるで俳優…“母ソックリ？”な清原正吾」「弟は父・和博に似てる？ 比較写真」Number撮影のカッコいい写真＆秋季リーグ戦の豪快な本塁打シーンも…一気に見る

「ソフトバンクは現有戦力が…」

――12球団屈指の戦力を誇るソフトバンクですが、今回のドラフトでは宗山塁選手(明治大)、柴田獅子投手(福岡大大濠高)と抽選で2連敗。1位で最速153km右腕の村上泰斗投手(神戸弘陵高)を指名しました。 小笠原道大(以下、小笠原)　もちろん抽選で負けたのは痛かったとは思いますが、2回外しても一概に「失敗だった」とは言えないのがドラフトですよね。結果的に競合した選手よりも活躍することも少なくない。過去を振り返れば坂本勇人も村上宗隆もいわゆる「外れ1位」でしたし、山田哲人に至っては2回外れたあとの1位指名だった。それにソフトバンクは現有戦力が……。 ――圧倒的ですよね。 小笠原　であれば、高校生の“素材型”の選手を指名できたのは決して悪くない。3年後、4年後に福岡のマウンドで投げている姿をしっかりとイメージできていると思います。 ――4位で宇野真仁朗選手(早稲田実業高)、5位で石見颯真選手(愛工大名電高)と高校生の内野手を指名しています。 小笠原　数年後を考えたら、妥当な指名だと言えます。育成も13人ですか……。これは潤沢な資金と設備があるソフトバンクだからこそできること。二軍から四軍までシビアな競争があって、1年、2年で切られる可能性もありますけど、若い子からしてみればチャンスですよ。朝から晩まで野球のことを考えて、365日過ごすことができる。いろいろ言われますけど、仮にソフトバンクの支配下になれなくても、他の11球団が目をつける可能性もある。こういった育成指名が、もしかしたら今後のドラフトのあり方を変えるかもしれませんね。

「この選手は面白いですね」小笠原が挙げた名前

――続いて、小笠原さんの古巣でもある日本ハムです。宗山選手の抽選は外しましたが、ソフトバンクとの一騎打ちで柴田獅子投手(福岡大大濠高)の交渉権を獲得。新庄剛志監督も大きな期待をかける“二刀流”です。 小笠原　野手なのか、投手なのかと言われていますが、最初は決めつけずに両方やらせるんじゃないですか。本人が「どちらもやりたい」と言っているのなら、その意思を尊重する球団ですから。まずは二軍でしっかりと体作りをしながら、適性を見極めて、成功の確率を上げていく。日本ハムにとっても本人にとっても、やりがいのあるチャレンジになると思います。 ――2位の藤田琉生投手(東海大相模高)は198cmの長身投手。最速150kmで高校日本代表にも選ばれています。 小笠原　この選手は面白いですね。この先、なにかアクシデントがないかぎりは必ず頭角を現してくるでしょう。宗山選手は外しましたけど、むしろ日本ハムのカラーが出たというか、ある意味でプラン通りというか。自分たちはポテンシャルのある選手にいくんだ、というビジョンを感じますね。やはり他の11球団とはすこし違った印象を受けます。一方で、支配下で指名した6人中5人がピッチャーというのは、「強化ポイントは投手陣だ」という明確な課題を意識したものでしょうね。