阿部巨人に優勝をもたらした「3捕手併用」 守備力を重視した指揮官の眼力
「阿部カラー」の濃い選手起用が、随所に見られたレギュラーシーズンでした。 就任1年目で巨人を4年ぶりの優勝に導いた阿部慎之助監督です。なかでも昨季、143試合に出場し、打率.281、16本塁打、55打点と「打てる捕手」として盤石のレギュラーだった大城卓三を固定することなく、岸田行倫、小林誠司との「3捕手併用」で勝ちきったことは、特筆に値するでしょう。 【動画】これぞ、ベテランの意地!7回に代打で登場した坂本が適時打を放ったシーン スポーツ紙のデスクは言います。 「大城は2023年にWBC日本代表として世界一にも貢献した、日本を代表する捕手ですが、一方で2020年に正捕手に君臨後、2021年からの3年間に至っては、チームが優勝を逸しているという事実がありました。捕手の仕事はリード面、盗塁を刺すこと、打つことと多岐に及びますが、最も大切なのは『チームを勝たせること』。自ら巨人の扇の要を担ってきた阿部監督は、それを痛いほど分かっているでしょう。だからこそ『聖域』にメスを入れることができたんです」 それまで控え捕手に甘んじていた岸田がスタメンマスクをかぶることも多くなり、打撃面がウィークポイントの小林は「菅野専用捕手」として同級生の“スガコバ”バッテリーに特化。元々打撃も非凡なものを持っていた岸田は、明るい性格もプラスに作用して、キャリアハイの88試合に出場。小林は昨季から倍増の42試合に出場し、打率こそ.152と低調でしたが、菅野が昨季の4勝8敗から15勝3敗へと「V字回復」する大きな要因になったのです。 「一方、エースの戸郷翔征は大城を“指名”するなど、3捕手がそれぞれの持ち味を発揮。『適材適所』でチームを活性化した点は、捕手を知り尽くした阿部監督の面目躍如と言ったところでしょう」(前述のデスク) 何となく固定化されていた役割を、競争により活性化させていく。その手法は組織論としても応用できそうです。 どんな組織にも光と影がある。スポットライトを浴びる選手がいる一方、「俺もこのままじゃ終われるか」とチャンスを待つ選手もいる。 そんな控え選手に活躍の舞台を与え、チームを「勝たせた」阿部監督のマネジメントに、称賛が集まるのは自然なことと言えるでしょう。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]