夏休みにイッキ見推奨!「涙の女王」「寄生獣-ザ・グレイ-」…おすすめ韓国ドラマ5選
勢いが衰えるどころかますます注目度が上がっている韓国ドラマ。OTTの普及で、日本でも韓国での放送と同タイミングで視聴できるようになり、また、Netflixやディズニープラスのオリジナル作品も次々と生まれている。そんななかから、注目の韓国ドラマを5本紹介。時間がたっぷりあるこの機会にイッキ見してみては? 【写真を見る】韓国の放送局tvNのドラマ視聴率1位だった「愛の不時着」を超えて、歴代1位となった「涙の女王」 ■笑いと涙のバランスが絶妙で放送局の歴代ドラマ視聴率1位を獲得した「涙の女王」 まず紹介したいのは、Netflixで配信中の「涙の女王」。弁護士のペク・ヒョヌ(キム・スヒョン)と韓国一の財閥であるクィーンズグループの令嬢、ホン・ヘイン(キム・ジウォン)は、大恋愛の末に結ばれたが、結婚3年目の現在は寝室も別で会話も無く、夫婦仲は完全に冷え切っている。そのうえ、地方の片田舎出身のヒョヌは、セレブであるヘインの家族から日々冷遇され、もうウンザリだった。 離婚を決意して、ヘインに告げようとした時、彼女から「脳に手術不可能な腫瘍が見つかり、余命3か月だ」と告白される。彼は哀しむどころか、あと3か月ガマンすれば解放される、と内心大喜び。現状では「無い」とされている財産分与を受ける為に、彼女を心配して想うフリを始めた。そんなヒョヌの態度に、次第に愛し合っていた当時の感情を思い出すヘイン。そして、ヒョヌもまた、フリではなく彼女への愛が再燃するのだった…。 2人の愛の軌跡を描くと共に、ヘインの大学時代の友人で彼女を想い続けるウンソン(パク・ソンフン)の登場をきっかけに起こる波乱、それぞれの家族の人間模様、ヘイン一族の会社の乗っ取り問題など、様々な要素が絡み合ってストーリーが展開していく。 シリアスとコメディーの割合が絶妙で、感動の涙を誘った直後に大笑いの展開が起きたり、緊張感漂うシーンなのにクスッと笑えたり…と、とにかく飽きさせず、1話平均90分近い長さでも、毎回あっと言う間。 そして、“役を生きる俳優”キム・スヒョンは、今回も演技を超えるリアルさで“ペク・ヒョヌ”が実在するような気持ちにさせる他、キム・ジウォンはじめ全ての俳優がリアルな存在感で、登場人物の人生を覗き見しているような没入感を与える。そんな事から視聴率は韓国で上昇を続け、最終話では24.9%(全国有料世帯基準)を記録。放送局tvNのドラマ視聴率1位だった「愛の不時着」を超えて歴代1位となった。 また、ヒョヌとヘインの結婚式のシーンは、「愛の不時着」での共演をきっかけに結ばれたヒョンビンとソン・イェジンの結婚式をオマージュ、本作と同じ監督作品の「ヴィンツェンツォ」からソン・ジュンギが“ヴィンツェンツォ”として登場したり、同じ作家の「サイコだけど大丈夫」で、キム・スヒョン演じるガンテの兄役だったオ・ジョンセがカメオ出演したり、他にもこれらのドラマではおなじみの俳優が多数出演。韓流好きにはたまらない仕掛けが各所に盛り込まれている。 ■日本の大人気漫画の韓国版スピンオフ「寄生獣-ザ・グレイ-」 漫画家・岩明均による代表作「寄生獣」の世界観を踏襲しつつ、韓国を背景にしたオリジナルスピンオフ作品。岩明均は、1990年代に連載されていたSF漫画「七夕の国」も実写化され、ディズニープラスで配信中。大いに話題を呼んでいる。 「寄生獣-ザ・グレイ-」のあらすじをざっと紹介しよう。ある日、スイン(チョン・ソニ)は、バイト先のスーパーでトラブった客に帰り道で刺されてしまい、瀕死状態に。その時、彼女の中に謎の生物が入り込んだ。それは、人間の脳を食べて寄生する生物だった。数週間前に韓国全土に飛来したその生物は、頭を自在に変形させて時には刃物のようにして、本能に従って人間を殺すのだ。 スインに寄生した生物は、“宿主”となる彼女の傷を治す事が先決だった為、治癒に力を使い果たして脳を食べ損ね、彼女は半人半獣の“変種”となった。スインと偶然知り合ったチンピラのガンウ(ク・ギョンファン)から、“ジキルとハイド”に例えて「ハイジ」と名付けられた寄生生物は、スインが死ねば自分も死んでしまう為、スインが危険な時だけ脳を支配し、彼女の体を守っている。 その頃、韓国では寄生生物への対抗チーム“ザ・グレイ”が設立され、チーム長・ジュンギョン(イ・ジョンヒョン)が指揮を取っていた。 ジュンギョンにとって、脳を乗っ取られていないにせよ、スインも敵に変わりはない。また、寄生生物たちにとっても、スインは異端とされ、敵視される。そして、成り行き上、行動を共にするようになったスインとガンウは、組織化して人間社会を支配しようと目論む寄生生物に立ち向かっていく…。 監督のヨン・サンホは、元々「寄生獣」の大ファン。今回のドラマは「ファンフィクション(ファンが作る2次創作物)のような感じで作業した」とのこと。オリジナルストーリーだが、設定は原作から逸脱しておらず、監督の原作に対するリスペクトと愛情が感じられて、原作ファンも楽しく観られるはずだ。 また、寄生生物の頭部の変形シーンのリアルなグロテスクさや、スピード感溢れる戦闘・アクションシーンは一見の価値アリ。スマホやタブレットではなく、できる限り大画面でこの大迫力を体感してほしい。原作「寄生獣」の主人公・泉新一役で、菅田将暉がサプライズ出演している点にも注目だ。 ■韓国で視聴率70%超の国民的刑事ドラマの前日譚「捜査班長 1958」 1971年から1989年まで韓国で放送され、最高視聴率、なんと70%超の国民的刑事ドラマ「捜査班長」の前日譚。主人公・ヨンハンが捜査班長になるまでのエピソードが描かれる。 1958年、ソウルの警察署に田舎からヨンハン(イ・ジェフン)が赴任してくる。彼は“京畿道 牛窃盗犯検挙率、3年連続1位”を誇る勧善懲悪の刑事。赴任初日から暴力団・東大門派の巣窟に単身乗り込み、組の大黒柱を難無く逮捕する大手柄。と思いきや、署長以下ほとんどの刑事が暴力団と癒着し、汚職にまみれた署内で、ヨンハンは赴任早々「厄介者」となってしまった。 だが彼は、そんな腐敗した環境の中でも正義を貫き、「狂犬」と呼ばれる後輩刑事・サンスン(イ・ドンフィ)、怪力を見込んでスカウトしたギョンファン(チェ・ウソン)、エリートの新人刑事・ホジョン(ユン・ヒョンス)とチームを結成。義理人情に厚く、悪いヤツらは誰であろうと許さない彼らが、弱きを助け強きをくじく姿を描く。ディズニープラスで全10話配信中だ。 衣装、セット、小道具、全てにこだわり抜いて、50~60年代を再現。画面の色味や質感もその当時の作品のようで、一瞬「昔のドラマなのかな?」と錯覚してしまうほど。徹底したこだわりのおかげで、制作費は1話につき約20億ウォン(約2億円)程かかったそうだ。 無骨で熱血漢なヨンハンをはじめ、どのキャラクターもどこか懐かしさを感じさせる。生活苦で犯罪に走った者が出所後に正しく生きられるように手を貸したり、つらい待遇を受けている人々の力になろうとする人情の厚さにも好感が持て、気づけばヨンハンたちを応援しながら観てしまい、全10話があっという間。彼らの活躍をもっと見たいと思わせる。また、ヨンハンの妻・ヘジュ(ソ・ウンス)にも注目。内助の功が素晴らしく、まさに“理想の妻”だ。 そして、所々で本家「捜査班長」でヨンハンを演じたチェ・ブラムが現代のヨンハンとして登場する。自身の若き頃を回想する老いたヨンハンを見ていると、本家のドラマを観ていなくても、時の流れを感じてとてもノスタルジックな気持ちにさせる。 ■近未来を舞台にしたノンストップサスペンススリラー「支配種」 韓国大統領テロ事件から数年後の2025年、元軍人のチェウン(チュ・ジフン)は、事件の犯人を暴く為に、独自の捜査を続けていた。そんな中、彼は人工培養肉を世界に提供する国際的企業・BF社が事件以降、記録的な利益を上げている事、そしてBF社のCEO・ジャユ(ハン・ヒョジュ)が事件の生存者である事を知る。彼はボディガードとしてジャユに近づいて組織に潜入し、事件の真相に迫ろうとするが、そこで世界を揺るがす秘密を目撃する…。事件の真実とその背後を追う、ノンストップサスペンススリラー。 チュ・ジフンの188cmの長身から繰り出されるアクションは、思わずため息が漏れてしまうほどのカッコよさ。そして、冷たくて理性的なCEO役のハン・ヒョジュの新たな一面と、時に女性的、時に中性的なキャラクターを表す数々の衣装も見どころ。 また、ストーリーに緊張感を与える首相役のイ・ヒジュンの底知れない存在感、ツンデレな魅力たっぷりの、ジャユを支える彼女の最側近・オンサン役のイ・ムセンなど、脇を固める“演技職人”たちが作品の魅力を倍増させている。 ■200日後の死を回避できない人々の生活を淡々と描く「終末のフール」 Netflixで全12話配信中の「終末のフール」は、伊坂幸太郎の同名小説が原作。2025年、300日後に小惑星が地球に衝突し、朝鮮半島の周辺が滅亡する事が不可避とのニュースが流れる。韓国内はパニックとなり、富める者たちは生存できる可能性のある外国に移住するが、庶民は国を出る事もできずに、滅亡の日を待つしかなかった。 Xデーまで残り200日となった韓国は、無秩序な世の中になっていた。脱獄した囚人たちは堂々と子どもたちを拉致して人身売買を行い、「衝突はデマだ」とうそぶくエセ宗教も藁をもすがる人々を味方に付け勢力を拡大。その一方で、諦めに近い気持ちで淡々と以前と変わらぬ日常を過ごす者たちも居た。 子どもたちを守ろうと捨て身で孤軍奮闘する中学教師のセギョン(アン・ウンジン)を中心に、様々な立場から終末までの日々を過ごす人々の姿を描く群像劇。最期の日を彼らはどのように迎えるのだろうか…。 本作は、テーマからパニック作品を想像するが、実に淡々とした人間ドラマ。登場人物の多さに加え、回想シーンとして時系列が行ったり来たりする為、“ながら見”はできず、集中が必要だ。2025年という、もう目前に迫った世界が舞台なので、「実際に自分の身に起きたら、どうやって過ごすんだろう…」と、自分と向き合いながら観てほしい。 文/鳥居美保