建て替えは液状化リスクが少ない地域を 東京湾岸のような埋め立などでは過去に液状化
60年前の1964年6月16日、マグニチュード7・5の地震が日本海の海底下で発生し、新潟県周辺を強震と津波が襲いました。 新潟地震で注目されたのが液状化です。信濃川沿いの新潟市川岸町に立っていた鉄筋コンクリート造の県営アパートが、軒並み横倒しになりました。当時の写真は、能登半島地震で石川県輪島市の7階建てビルが倒れた様子を彷彿(ほうふつ)とさせます。
間口が狭く背の高い、縦長の重い建物は倒れやすい
液状化は、緩く堆積した砂地盤で、地下水位の浅い場所で起きやすい現象です。 川岸町は、町名からも分かるようにこの条件に当てはまります。新潟地震の頃までは、液状化するような地盤に重い鉄筋コンクリートの建物を建てることはまれで、現象の多くは田んぼなどで起きていましたが、都市の拡大とともに建物被害が目立つようになったのです。 近年でも、東日本大震災(2011年)では、東京湾岸のような埋め立て地、熊本地震(2016年)では、かつて川があった熊本市の旧「河道」周辺が液状化しました。能登半島地震の際は、石川県内灘町や新潟市などの砂丘の後ろ側の緩斜面、砂丘周辺で被害がありました。このほか、丘陵地でも谷筋を盛土造成した所やため池を埋め立てた所は要注意です。 こうした弱い地盤に重くて高い建物が建てられるのは、技術の発達で建物の下にある 杭くい 基礎で重さを支えられるようになったからです。ただ、当初の杭は建物の重さを支えるのが役割でした。地震のような横揺れへの耐性はなく、強い横揺れを受けると杭が破断し、建物を支えられなくなるのです。間口が狭く背の高い、縦長の重い建物は倒れやすく、特に注意が必要です。
液状化危険 下げる技術も
震度6強~7程度でも倒壊しない強さが求められる新耐震基準は1981年に設けられましたが、杭の耐震設計が推奨されたのは1984年、義務化は2001年築の建物から。1981年以前の建物を耐震補強する際も、基礎の補強はほとんど行われません。液状化では死者が出るようなことはないと考えられていたためでしょうが、建物が傾けば生活の継続は困難です。 現在の技術で液状化の危険性を下げることはできます。宅地造成時にセメントを混ぜる地盤固化や砂杭による地盤の締め固め、地下水排水による地下水位低下などが有効です。個人でできる対策としては、基礎周辺の地盤改良や建物の下にコンクリートを敷き詰める「べた基礎」にすること、建物を軽くすることなどが考えられます。 こうした技術があるとはいえ、住み替えを考えている人には、やはり元々リスクが少ない地域を選ぶことがお薦めです。
福和伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大名誉教授、あいち・なごや強靱化共創センター長。清水建設、名大助教授を経て2022年3月まで同大教授。日本地震工学会会長も務めた。専門の耐震工学の分野にとどまらず、幅広い防災・減災の研究や講演活動を行っている。1957年生まれ、名古屋市出身。