「スキルはユウキ、顔はランかな(笑)」男子バレー日本代表が海外でも大人気なワケ… 記者も驚いたフィリピン熱狂の夜「彼らは実写版ハイキューだ」
実感した「ハイキュー!!」効果
もう一つ、フィリピンに熱狂を生み出している要因が、漫画『ハイキュー!! 』の影響だ。すでに全世界でアニメ化され、今年公開された映画は日本でも大ヒットを記録している。 アニメ人気が国境を越えることは珍しくなく、これまで取材に訪れたドイツやイタリアでも「日本から来た」と答えると「『ハイキュー!! 』が大好きだ」「あなたは『ハイキュー!! 』のキャラクターで誰が好き?」と目を輝かせる現地の人たちに会う機会が多々あった。フィリピン会場でもその人気は健在だった。 主人公が所属する烏野高校バレーボール部のユニフォームTシャツに「必勝」のハチマキを巻いたフィリピン人男性は、ネーションズリーグには何度も通っていると目を輝かせていた。「国歌演奏で日本の選手と同じように観客席にいた自分の顔も映った」と、昨年大会の中継映像を見せながら、嬉しそうに語った。 「日本のアニメは大好きだけれど、特に『ハイキュー!! 』が大好き。ストーリーが素晴らしくて、バレーボールを知らない人にも『ハイキュー!! 』を見たらすべてわかるよ、と伝えているんだ」 繰り返し、セリフを覚えるほどに見続けた大好きなアニメ。彼に言わせれば、その“実写版”が現在の男子バレー日本代表なのだという。 「日向はユウジ、影山はセキタサン、牛島はケントかな。小さなチームが自分たちよりも大きな相手に、システムとスキルでチャレンジする。大きな敵を倒す日本の姿を見ると、『ハイキュー!! 』を見ている時と同じように、最高の気持ちになるよ」 白熱した試合では、自然に「ニッポン!」と「U・S・A!」コールが入り混じる。人気が高い高橋藍は欠場で会場にも不在。アメリカ代表のトリー・デファルコは控えに回ったが、大型ビジョンにその姿が映されるたび、コンサート会場のような悲鳴に近い歓声も起こった。 中盤からはやや「U・S・A」コールが優勢に。中でも、この日一番の盛り上がりを見せたのは、日本が第3セット終盤に逆転したところでクリステンソンが投入された場面だった。 このままストレートで負けるものか、とアメリカ代表の主将がコートに立つ。セッターとしてどんな策を打ってくるのか、と記者席でも思わず姿勢が前のめりになった矢先、ある男が空気が一変させる。 とんでもない回転と軌道のサーブで怒涛の3連続サービスエースを見舞った宮浦健人だった。 25対19――この日、一番の「ギャーーーー!!」という歓声に負けないほど、宮浦の雄叫びも響き渡った。 「完全に声が嗄れました(笑)。でも最高の雰囲気で後押ししてもらえたし、(クリステンソンが出てきて)盛り上がって、これは攻めるしかないよな、と。とにかく何も考えずに思い切り打った結果、いいサーブが打てました」 宮浦のサーブで押し切った日本がストレート勝ちを収め、熱狂の夜も閉幕。試合後、筆者の隣で「USA」コールを口にしていたフィリピン人記者から「アメイジング」と宮浦のサーブを笑顔で称えられた。 「素晴らしい試合で楽しかった。おめでとう。パリオリンピックで日本がトップ3に入ったら、フィリピン国民も、自分の国の出来事と同じように祝福するよ」 来年9月には、フィリピンで男子バレーの世界選手権が開催される。あちらこちらからの「See you!」が心地よい夜だった。
(「バレーボールPRESS」田中夕子 = 文)
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