右腕切断の佐野慈紀氏、涙を浮かべながら病と向き合う思い語る「いちいち落ち込んでいられない」
元近鉄や中日の右投手で、糖尿病による感染症で5月に右腕を切断した佐野慈紀氏(56)が21日、左腕で再スタートを刻んだ。「くら寿司トーナメント2024 18thポップアスリートカップ」(神宮)の開会式に出席。始球式ではサウスポーで代名詞の「ピッカリ投法」を初披露した。グラウンドに立つのは6年ぶり。涙を浮かべながら、病と向き合う心境を語った。 【写真】涙を浮かべる佐野慈紀氏 車いすで訪れたマウンドにも、思いは変わらなかった。「やっぱりグラウンドに立つと、気持ちが大きくなりますね」。勢いよく振りかぶった左手で帽子を飛ばす「ピッカリ投法」を復活させ、白球はワンバウンドで捕手に届いた。右脇にはこの日のために新調した「かがや毛」と刺しゅうされたグラブを挟んでいた。 現在も入院生活は続いている。右腕切断後も心臓弁膜症の手術を受け、腰の感染症とも闘う。外出許可を得ての挑戦を終え「いちいち落ち込んでいられない。目標はもう1度、野球教室をやりたい」と夢を語った。同じ病を患う人々にも「いくらでも対処できると思うんですよ。罹患(りかん)しても落ち込むことじゃない」と、右腕や右足指を失っても前向きな言葉が自然と並んだ。 左腕で再出発を果たし、再びベッドへ戻る。野球を愛する気持ちが支えだ。「本当に野球って面白いし、やっぱり俺、(野球が)大好きなんだな」。まずは第1歩。目元を光らせて、いとおしそうにグラウンドを見つめた。【黒須亮】