再生エネルギー接続保留問題 根拠なき批判を撃つ 国際環境経済研究所所長・澤昭裕
先日、再生可能エネルギーの固定買取制度の欠陥についての記事を書いた。しかし、その後も明らかな誤解や認識不足によるこの問題の論評が後を絶たない。そこで、ここで何点かFAQ的に解説しておこう。 再生可能エネルギーに暗雲 固定価格買取制度のどこが問題なのか 国際環境経済研究所所長・澤昭裕 再エネの接続申込量が多い九州電力は「7月末現在の申込み量が全て接続された場合、近い将来、太陽光・風力の接続量は約1,260万kWにも達することが判明しました。これらの全てが発電すると、冷暖房の使用が少ない春や秋の晴天時などには、昼間の消費電力を太陽光・風力による発電電力が上回り、電力の需要と供給のバランスが崩れ、電力を安定してお届けすることが困難となる見通しです。」と、接続を認めるかどうかの回答を保留すると表明した。 これに対して、「接続申込量よりも実際に稼働する設備の容量は小さいのではないか」という批判がある。しかし、これがもし接続申込みをしている者が、実際に設備投資をしないという意味であればそれ自体が問題だ。あるいは、これが実際には出力抑制して使うだろうという意味での批判あれば、それは電力会社のグループ会社が、全体の系統運用のコントロール下で行う事業であればともかく、今回の接続申込者が自主的にそうした使い方をするとは考えられない。 また、「太陽光や風力の稼働率は低いので実際の発電量はさらに小さくなる。」という批判をする人もいるが、この批判はkW(消費電力)とkWh(消費電力量)の違いを理解していない批判だ。停電の原因になるのは 「電気を使った量(電力量)」 ではなく,「電気の消費速度(電力)」 である。ドライヤー,アイロンや電気ポットなどを同時に使えば,家のブレーカーが落ちる。それと同じことだ。
二つ目に多い批判は、発送電分離との関係だ。今の電力会社は発送電分離していないから再生可能エネルギーの接続に消極的で、総配電網を独占しているから情報も開示していないという批判である。 しかし、これほど的を射ていない批判もない。接続保留は送配電網の需給運用技術上の話であり、送配電網の所有の所在とは無関係だ。海外でも、送配電を分離している国においても、系統運用者(送配電網管理者)が停電を起こさず、安定した電気の供給を行うために接続している再生可能エネルギー発電施設の出力抑制などの対応は行われている。 高速道路や空港を運送事業者や航空会社が自ら所有していることはないという例を持ち出して、電力会社と比べるような立論もよく見かける。それではその批判者に聞きたいが、空港に管制官はいないのか? 高速道路も中央司令室はないのか? それは存在するに決まっている。つまり、公共財は所有権を誰が持とうが、その管理責任者は混雑や事故を避けるための使用・輸送量制限は行う必要があるのだ。この点を理解していない人だけが、そのような比喩を使うことが多いのである。