再生エネルギー接続保留問題 根拠なき批判を撃つ 国際環境経済研究所所長・澤昭裕
よって、今後発送電分離が行われたとしても、総配電網は独占する事業体が存続する。これを競争に委ねれば、送配電網が何重投資もされて、例えば家の1階はA電力会社の配電線、2階はB電力会社の配電線が引かれることになる。冗談のようだが、実際戦前にはそうしたことが頻繁に生じて、社会的に無駄な重複投資が行われていたがゆえに、送配電網整備は強い規制下で独占的に行わせることが最も効率的だと理解されたのである。 また、発送電分離を行えば、需給調整が柔軟性を増して、再生可能エネルギーの導入がもっと進むという論もある。この論を述べる人は、いったい何を根拠に言っているのだろうか。例えば、発送電分離下で再生可能エネルギーをどんどん導入したドイツでは、送電線の建設がうまくいっていないうえ、お天気任せの自然をバックアップするための火力発電設備が不足し始めており、石炭火力の増設計画が進められるとともに、老朽火力を撤退させないために政府が補助金まで出しているのである。 再生可能エネルギー推進派の人には「ドイツを見習え」という人が多いが、私も「ドイツを見習え」と言いたい。ただし、それは、固定買取制度によって消費者がもう我慢できないくらい電気代が上昇し、さらに送電線や火力発電設備の不足によって量的な需給調整にも四苦八苦している現実のドイツを見習え、ということだ。(ドイツについての詳しい事情は、国際環境経済研究所主席研究員の竹内純子氏による次の論考等を参照。 ーーーーーー 澤昭裕(さわ・あきひろ) 政策分析専門家。主著に『精神論ぬきの電力入門』、『エコ亡国論』など。原子力政策などのエネルギー問題や地球温暖化問題に詳しい。