“論破”は「死体」を積み上げるだけの行為…“対話”が“論破”よりも長期的に有益な納得の理由
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行する。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第10回 『まず「対話を“始める”」ために必要なこととは? 中学校の教科書から「対話の前提」を整える術を学ぶ』より続く
「論破」と「対話」
私の話を聞いていた女子中学生が手をあげました。 「でも、どんなに『対話』してもうまくいかないこともあると思うんです」 もちろん、ありますね。 「『対話』は、それをする前とした後では、お互いの関係が変わる」って書いたのを覚えていますか? ちゃんと対話すると、関係は変わります。 さんざん対話して、「ああ、この人はジャイアンだ。もうつきあうのは無理だ」と思ったら、ちゃんと関係は変わるでしょう。 対話することで関係が終わる。それも関係が変わったということなんです。 質問した中学生が驚いた顔になりました。「じゃあ、論破と変わらないじゃないですか」 論破はいきなり相手との関係を終わらせるよね。 でも、さんざん「対話」した後に、関係を終わらせた場合は、お互いに「なぜ関係が終わったか」を知ってるんだ。 だから、「俺はサッカーしかしない!」と叫んでいたジャイアンは、仲間外れになって淋しくなったら、ちょっぴり反省して、対話の中身を思い出すことができるんだ。関係を戻すために何をすればいいかが分かるんだね。だから、長編である映画版のジャイアンはいい奴になるとぼくは思ってるんだ。 質問した女子中学生が「?」という顔をしました。映画版のジャイアン、知らないか。