F1分析|レッドブル、実は予選パフォーマンスは昨年後半よりも改善? 問題はレースペースか?
一方レッドブルはレースペースで相対的に後退……
しかしその一方で、今年のレッドブルはレースのパフォーマンスは大きく落としている感がある。 レッドブルは2023年シーズン、予選で最速ではなくても、圧倒的なレースペースで挽回というシーンが少なくなかった。実際、22戦中10戦でレッドブルが最速。それ以外のレースでも2番手7回、3番手3回……レース終盤にタイヤ交換を行なうほど順位が上がる傾向にあるこの数字でこれだけ上位を記録し続けたのは、それだけレッドブルが強かったという証拠といえよう。 しかし今季前半前14戦でレッドブルが決勝最速だったのはわずか3戦のみ(上のグラフ参照)。ここが昨年とは大きく違う部分である。 つまりデータ上で言えば、今季のレッドブルは予選パフォーマンスは改善したものの、レースペースでは相対的に後退したと言うことができるかもしれない。 レッドブルでテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェは、「昨年に比べて改善したことは間違いないが、いくつかの部分では、期待していたほどの成果を得ることができなかった」と語っている。特に期待に届かなかったのは「高速コーナー」のパフォーマンスだと言うが、データを見る限りではレースペースで後れをとっているのは事実といえよう。 ただそれでも、マックス・フェルスタッペンのドライビングに寄与する部分も十二分にあるが、やはりレッドブルはまだ最速のマシンを持っているということだろう。そう考えれば、シーズン後半にレースペースが改善されることとなれば、再び最速の座をほしいままにする可能性もあろう。 さて決勝のペースでは、実はメルセデスが4回も最速をマークしている。しかもいずれも、彼らが勝利を手にしていないレース(エミリア・ロマーニャ、モナコ、カナダ、ハンガリー)でのもの。これは、ライバルよりも多くの回数タイヤ交換を行なったり、ライバルよりも遅く最後のタイヤ交換を行なったりしたためだった。一方で勝ったオーストリア、イギリス、ベルギーの3戦は、レースペースの面では4番目か5番目だった(イギリスでは予選は最速ではあるが)。 ここから考えるに、さすがはメルセデス……最速のマシンを持っていなくても、戦略によって勝利をもぎとる。そんな能力は最近までタイトル争いの中心にいたメルセデスだからこそだろう。 もしマシンの戦闘力が伴えば、ライバルにとっては恐ろしい存在になることをまざまざと見せつけた……メルセデスにとってはそんなシーズン前半だったかもしれない。
田中 健一