オジサンがじっくり優しく教えてあげて! Z世代が知らないコートやジャケットのしつけ糸とタグについて
『おい、そこの若人よ』と老婆心ながらに教えてあげたいもんですが、見ず知らずのオジサンから話しかけられるのも迷惑だろうし、もしかしたらこの時代、なんらかのトラブルに巻き込まれる可能性も否定できないため、控えるのがベターと判断し結局いつも放置したまま。 そもそも、ファッションに興味がなければ "しつけ糸"はおろか、コートやジャケットにある“ベント”や“ベンツ”、日本語でいう“馬乗り”といわれるワード自体知らなくて当然。家庭科の授業で習わなければ、Z世代的には『え、車ですか?』と言われてもおかしくない気さえします。 まぁ、ベントレー、メルセデス、跳ね馬乗り ――確かにクルマとちょこっと似ている部分もありますが―― 前述の“ベント、ベンツ、馬乗り”はすべて洋服のスリットのことを指しています。
所謂、衣服の裾に入れた切れ込みで、主に動きやすくさせたり、装飾のために用いられているディテールです。 そこを閉じるように×印で縫い付けられた糸は、運搬や保管の際に形が崩れないよう施されたもので、着用の前に解くのが基本。
要するに新品のシャツ襟に仕込まれている透明プレートやTシャツに折り込まれた薄紙、スニーカーに収納されたあんこと同等の役割ですね。 しかし、コートなどでは自分が着ている時に視界に入らない箇所のため、気付かないまま着用している子が大勢いるのも事実。 しつけ糸によって稼動域が狭くなり、服がつっぱって動きづらいため、普通は気付きそうなもんですが、ね……ってか、この問題自体、ショップスタッフが購入時にひとことアドバイスすれば一発解決するんだけどなーと、いつも嘆いています。
また、しつけ糸はスーツのポケットにもついている場合が多々あります。しかし、これは…
あえて切らないという選択も。 いちいちルールが違って メンドくさいとお思いでしょうが、これにはキチンとした理由があり、なぜならポケットにモノを入れてしまうとスーツのラインが崩れてしまうほか、生地の寿命を縮めてしまう恐れがあるからです。 そもそも、スーツのポケットは装飾的な意味合いが強く、物を入れてシルエットを壊すなど言語道断。 『身近なスマホでさえポケットNGだ』なんて言おうものなら、時代錯誤バリバリな昭和オジサンの烙印を押されること間違いなしですが、日頃柔軟で優しいジェントルメンにも譲れないこだわりがひとつくらいあってもいいじゃないですか。 それと、もうひとつだけ今年晴れて新入社員になるフレッシャーズへお伝えしたいのが、袖口に簡易に縫い付けられた生地メーカーやブランドなどタグ。 あれは店頭においてハンガー状態でもスーツの生地や機能をお客さんにアピールするためにつけた言わばシールのような布タグで、決してデザインではありません。 着用前に外す前提のモノです!