市場予想を上回った個人消費は日銀にとって「渡りに船」、年内最後の利上げはあるのか?
■ インバウンド消費は「終わりの始まり」か? こうしたGDPの仕上がりは日銀ウォッチの観点から看過できない。成長率自体に大きなサプライズはなくとも、日銀が「堅調な内需」を主張するのは十分可能な数字とも言えるためだ。現在、利上げを織り込みつつある12月18~19日の日銀金融政策決定会合にとって、格好のエクスキューズになった可能性はある。 もちろん、細かい話をすれば、今回、内需を支えたのは個人消費だけで、民間在庫変動と政府消費(それぞれ寄与度は+0.1%ポイントずつ)を除いた最終需要は前期比+0.1%とほぼ伸びていない。よって、利上げの正当性に疑義を呈する向きも当然あるだろう。 しかし、既に円安経由でインフレの上方リスクが増している以上、7月と同じロジックで利上げする誘因は存在している。表立って為替を理由にしたくないとすれば、今回の個人消費の数字は「渡りに船」となる可能性があるのではないか。 個人消費とは裏腹に今回、弱さが目立ったのが外需だ。特にインバウンド消費を示す「非居住者家計の国内での直接購入」は前期比▲13.3%と2022年4~6月期以来、8期ぶりのマイナスに陥っている。 2桁マイナスはパンデミック発生を受け、世界の国境が閉ざされた直後の2020年4~6月期(前期比▲81.0%)以来だ。 7~9月は円相場が急騰したことや複数の台風が上陸したことなど旅行需要の抑制を強いる要因があったものの、果たしてそれだけなのだろうか。筆者はかねて人手不足などに起因するインバウンド消費の頭打ちを懸念してきた。今回のマイナスが「終わりの始まり」の予兆なのか、気にしたいところである。 インバウンド消費の減退を背景としたサービス輸出の押し下げもあって輸出全体では前期比+0.4%と極めて小さな伸びにとどまっている(図表(2))。一方、輸入全体では前期比+2.1%と伸びており、純輸出の寄与度は▲0.4%ポイントと成長を抑制している。