坂本勇人「神様」を超えても勝利が全て「個人的なことは大丈夫です」
◆JERA セ・リーグ 巨人2―1DeNA(14日・富山) 巨人がDeNAを下してリーグ一番乗りで20勝に到達し、敗れた阪神に代わって再び単独首位に立った。坂本勇人内野手(35)が2回先頭で右前安打。「打撃の神様」川上哲治を超えてNPB単独13位に浮上する一打で、岸田行倫捕手(27)の決勝1号2ランを呼び込んだ。投げては山崎伊織投手(25)が7回1失点にまとめ、両リーグトップタイとなる無傷の4勝目をマークした。 相手にすればベストボールだったかもしれない。内角高めへの155キロ直球を、坂本のバットが捉えた。0―0の2回無死、DeNAの左腕・ケイのクロスファイアをはじき返した鋭いライナーが右前に弾む。NPB歴代13位で並んでいた川上哲治を超える通算2352安打。左肘をたたんで逆方向に打ち返す内角打ちに、技術が詰まっていた。 初代オーナーの故・正力松太郎の出生地でもある富山開催は、巨人にとって21年以来。冠雪が残った北アルプスを左翼後方に望む富山アルペンスタジアムで「打撃の神様」を上回った。「個人的なことは大丈夫です」とクールだったが、集まった1万9500人にメモリアルな一打を届けた。 試行錯誤の中で生まれた快音だった。打率2割3分5厘。前日まで5戦は16打数3安打、打率1割8分8厘と苦しんでいた。試合前のフリー打撃後にDeNA・石井琢朗コーチの元へあいさつに向かうと「(体は)元気ですけど、バッティングは元気じゃないです」と本音を漏らした。 石井コーチは歴代11位の通算2432安打。「いい時の自分を追い求め過ぎて、体がついていかない。年々投手のレベルも上がってきているし。長く現役を続けていると、誰もが通る道」と理解を示した。20~21年には巨人で野手総合コーチを務め、フォームを微調整する坂本の姿を見てきた。「彼は今まで築き上げたものがあるので、ある程度(今までの形を)ぶっ壊しても、新しいものを建てられるような気はする」と同コーチは背中を押した。好不調にかかわらず、安打を重ねる数々の「引き出し」を持つ男だからこそ、さらなる進化に期待した。 坂本の一打が岸田の決勝2ランにつながり、巨人は2年ぶりにリーグ最速で20勝に到達。再び単独首位に浮上した。18年目の今季は長嶋茂雄のリーグ記録に並ぶ通算186度目の猛打賞をマークし、通算300本塁打まであと9本と、メモリアルイヤーになりつつある。「1点差で粘って、チームが勝ったことがよかったです」。目の前の勝利だけを求める中で、偉業を成し遂げていく。(内田 拓希)
報知新聞社