【解説】和歌山県の私立高校7校が大阪府の”高校授業料無償化”に加入の方針 「断固反対」から一転、加入に傾いたワケとは
大阪府が実現をめざす高校授業料の無償化制度に、和歌山県の私立高校7校が参加する方針であることがことがわかりました。 大阪府は高校の授業料を所得制限なしに年間63万円まで補助する制度を来年度から段階的に始める方針です。この制度に、和歌山県にある9つの私立高校のうち、初芝橋本高校、智弁和歌山高校、近大和歌山高校、近大新宮高校、開智高校、和歌山信愛高校、高野山高校の計7校が加入する方針であることがわかりました。 正式に参加が決まれば、これらの学校に通う大阪府民は来年度の高校3年生から順次、授業料が無償になります。 府の制度では授業料の補助上限である63万円を超える分は学校側の負担を求める独自の「キャップ制」を導入していて大阪府をのぞく近畿1府4県の私学団体は11月7日「断固反対」として府に制度の見直しを 求めていました。反発の声が上がる中、なぜ和歌山県の私立高校は参加する方針に至ったのでしょうか。
①「授業料の低さ」
理由は大きく3つあげられます。1つは「授業料の低さ」。 和歌山県の私立高校は授業料の平均が約53万円5千円(去年5月1日時点)と近畿で最も低く、大阪府の授業料の補助上限「63万円」を唯一下回る県のため、制度加入後に新たな学校負担が生じないのです。
②「大阪府民の割合の高さ」
和歌山県内の私学に通う生徒のうち大阪府民は約25%を占めていて、近隣府県で最も高い値となっています。制度加入に伴い恩恵を受ける家庭がそれだけ多いということになります。
③「運営主体が大阪府にある」
加入の方針を示している高校のうち、初芝橋本高校を運営するのは大阪初芝学園、近大和歌山高校と近大新宮高校を運営するのは近畿大学で、両法人とも所在地が大阪府です。系列の府内高校はすでに府の制度に加入しています。そのため、和歌山県内にあるとはいえ影響を受けやすい学校であるといえます。 和歌山県の私学協会幹部は取材に対し「私学協会としては制度に賛同しかねる。ただ、法人が大阪にあり対応を統一せざるを得ない学校、また大阪府民、特に南部からの生徒をたくさん抱えている学校が多く、加入は各校の任意とした。今後9校すべてが参画することになるのではないか」と説明しました。 制度に加入する方針の各校の担当者は「制度があるのなら利用しないと保護者らに説明がつかない。やるなら早いほうがいい」「学校負担が生じないのであれば保護者の負担が減るほうがいい」と話す一方、全額無償になる大阪府民とそうではない和歌山県民との不公平感を懸念する声が多く上がりました。中には「不公平を払拭するには和歌山県が授業料の補助をあげるべき」という指摘もあります。
これに対し、和歌山県の岸本周平知事は28日午前の会見で「私立高校を支援するための財源が現在あるかどうか。まずは不登校対策など小中学校の子供たちが公平に教育の機会を受けられるように県の財源をさいていきたい」と述べるにとどまりました。 すぐに、生徒間の溝が埋まる、というわけにはいかなさそうです。