【元行員による10数億円盗難事件】三菱UFJ銀行の貸金庫に実際に行ってみて考えた「いまだに犯人が捕まらないワケ」
「あなたも心配でしょ?」
二重の扉を越えて、金庫室に入る。貸金庫はマンションの郵便ボックスを頑丈にしたようなもので、これが上下左右にずらりと並んでいる。大きさも数種類あるが、ざっと300個以上はありそうだ。 それぞれの契約スペースには施錠された扉がある。専用スペースの扉を開けるための鍵穴もスライド式の蓋で覆われていた。それを開くには「メモリーキー」と呼ばれる特殊な装置が必要で、これを使えるようにするためには、再びカードキーと暗証番号を入力する必要がある。慣れないとかなり手間取りそうだが、防犯上は仕方ないだろう。 貸金庫室に入ると、七〇代くらいの高齢女性とすれ違った。会釈をすると「心配だから見に来たわよ。あなたもでしょ?」と声をかけてくる。 三菱UFJ銀行側は会見で、事件が起きた支店以外では同様の事案は確認されていないと言っていたが、銀行側がすべてを把握できているとも思えない。多くの貸金庫利用者が不安を感じているのは当然だろう。 記者もボックスを取り出し、中身を確認したが、異常は見当たらなかった。これでひとまずは安心だ。 このように厳重に施錠されているはずの貸金庫で、どのような手口なら他人の貸金庫から金品を気づかれずに持ち出すことができたのか。ここまでの調査を元に推理してみたい。全ての支店の貸金庫が同じ仕組みなかは不明だが、犯行の舞台の支店も同じ構造という前提で検証してみよう。 後編記事【いまだ犯人逮捕されず…実際に銀行の支店で検証した「三菱UFJ元行員が他人の貸金庫を勝手に開けた犯行の手口」】で犯行の手口をさらに詳細に検討する。
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