最も有利な「総理大臣への道」は?読売主筆・渡辺恒雄氏の名著が緊急復刊!現代にも繋がる「昭和の政治」の裏側
---------- 読売新聞グループ本社代表取締役主筆である渡辺恒雄氏が1967年4月に刊行した『派閥と多党化時代―政治の密室 増補新版』が、4月26日に『自民党と派閥 政治の密室 増補最新版』として緊急復刊する。当時、30代後半から40代初めの政治記者で、幅広く政界を取材していた渡辺氏の分析は、「政治とカネ」や「派閥」が大きな問題となっている現代にも通用するものが少なくない。復刊した本書の内容の一部を特別公開する。 ---------- 【一覧】「次の首相になってほしい政治家」ランキング…上位に入った「意外な議員」 『総理大臣になれなかった「二人の政治家」の共通点…現役政治記者時代の読売主筆・渡辺恒雄氏の名著に記されていた「政治の本質」』より続く…
財界とのつながりが重要
ところで現時点で、一体どういう人物が、総理大臣へのコースを行くのに最も有利であろうか。その辿るべきコースを抽象して、ひとつの典型を書いてみよう。 まず東大法卒、在学中に高文をとり、大蔵省に入る。適当に宴会やマージャンをたしなみ、局長・次官クラスによい親分を作り、通産、外務、農林、建設などの利権の多い官庁の課長クラスに顔を作る。若いうちに地方の税務署長をやって、徴税の手心の加え方などを学ぶ。主計局で、予算の査定を通じ、各省の先輩官吏をしめあげたり、妥協したり、緩急の折衝術を学ぶ。銀行局で金融資本の経営陣に顔を作るのも将来のために有用。国有財産局に配置されたら、国有地の払い下げを通じ、大手の不動産会社やその他の大企業に恩を売ることができる。証券局に廻されたら、大手証券会社幹部とジッコンになっておくことだ。何しろ証券会社のいちばんこわいのが大蔵省証券監査官なのだから。その間、実力者の大蔵大臣の事務秘書官になっておくことは、将来の政界進出にとって、非常なプラスである。 やがて次官になる頃には、保守党の有力派閥の親分、つまり実力者のサカズキを貰っておかねばならない。この頃には、自分の郷里の地方政界ボスとの交際を広めておく。 次官を退官して、衆議院に立候補を決意するまでには、彼には、大企業経営陣のスポンサーが、何十人何百人となくついているであろう。もはや三千万円やそこらの陣中見舞はいつでも集まるに違いない。初出馬で当選。 経済官庁の政務次官や常任委員長、党政調副会長、副幹事長といったポストを、当選数回にして卒業、大蔵大臣、政調会長に出世し、やがて幹事長を二期ほどやる。この間、せっせと財界への便宜供与をはかり、その見返りとして資金を集め、集めた半分は陣笠にばらまく。かくて、二〇人、三〇人の子分が出来、派閥の親分となる。カネはますます集まり、総裁公選出馬に備えて蓄積する。この頃になったら、自分でカネ集めをすることはない。優秀な子分に代行させる。万一汚職事件が起きても、その子分が罪をきればよい。それでなくても、近頃は大臣や党三役になると、司直の方も「政局の混乱を防ぐため、慎重に処理する」ものである。
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