「臭いものに蓋をしただけ」政治資金規正法や所得税法違反の時効は5年…「10年前の領収書」の価値
不正が発覚すれば当然、国税局の出番となるだろうが‥‥‥。 「本来は国税局がちゃんと調べて、脱税の場合は告発する義務があります。検察はその告発を待って取り調べをする。国税局も検察もきちんと対応しなければいけないんですが、政治に対してはあまり強い行動に出ない慣わしになっています。 本来やるべきことをやっていない。これは不作為の違法です。彼らはやはり自分の身を大切にしますので、国民から厳しい怒りの声が上がらないとなかなか動かないでしょうね」 共同通信社が6月22、23の両日に実施した全国電話世論調査では、改正政治資金規正法について「政治とカネ」の問題解決につながらないとの回答が計78.9%。領収書の10年後公開を検討するとした政策活動費改革は「十分だとは思わない」が90.4%にも達した。 「国民のほとんどが評価していませんよね。当然でしょう。評価できる点が何一つないんですから」 共同通信社の同じ調査で、内閣支持率は22.2%。1月からの半年間、20%台が続いている。他社の調査では20%台以下となったものもある。 国民の政治への怒りは持続している。だが、抜け穴だらけの改正政治資金規正法を「数の力」で成立させておいて、岸田文雄首相は「実効性のある制度となった。大きな一歩である」と胸を張った。国民をなめているのか。 「国民はもっと怒りをエスカレートさせないといけないと思います。365日、政治のあり方に関心を持って発言していかないと、ほとぼりが冷めたらまた裏金づくりのようなことはできるだろうと、国会議員は考えるでしょう。 今の日本では、政治に対する不信感から『どうせ投票したって何も変わらない』と選挙に行かない人が多く、結果的に自民党を利するような状況が生まれています。憲法の前文にありますが、『そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの』なんです。国会議員が国民の信託に応えていなければ、託した側の国民は選挙で選び直さなければいけない。国民が厳しい態度を示さないと、政治は変わっていきません」 浦野広明(うらの・ひろあき)税理士、立正大学法制研究所特別研究員。1940年、北海道生まれ。’02~’11年、立正大学法学部教授・立正大学大学院法学研究科教授。’11~’21年、同大学法学部客員教授。著書に『税務調査に堂々と立ち向かう』(日本評論社)、『税が拡げる格差と貧困』(あけび書房)、『税財政民主主義の課題』(学習の友社)など。 取材・文:斉藤さゆり
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