奥田瑛二、「監督の“OK”は何点?」の答え “命がけ”で歩んできた俳優人生
――今回もご自身で調べて行ったんですね。 そこに入っている人たちと一緒に話したり、もちろん先生にもいろいろ質問したりしましたが、「僕たちも気づきませんでした」といったところまで観察しましたよ。みなさんと仲良くご飯を食べたりして見ていきましたから。そこから自分なりのキャラクターが出来ていくわけです。そういうことから始めないと、この役はできませんでした。1人でそういうことをするのが好きなんですよ。ところで、監督が「よーい、スタート」と言って、「OK!」となったとき、「OK」にもいろんな言い方がありますよね。同じ人なのに。たとえば「はい、OK」(あまり感情をこめず)、これは何点だと思いますか? ――70点くらいでしょうか。 100点。OKはすべて100点なんです。 ――なるほど。 でも監督が思っている以上のことをやらなきゃいけないのが役者だから、七転八倒するわけです。「もう1回お願いします」と言っても監督がOKと言ったら、「俺が言ってるんだから」となる。 ――奥田さんも「もう1度やりたい」と言ったりしますか? ほとんど言ってませんね。やりたいことがあればその前に話し合いますし、どうしてももう1度やりたいと思ったときは、わざとNGを出すんです。 ――(笑) 「ああ、すみません」と噛みながら、わざとNGを出す。それくらい根性なかったらダメですよ。とにかく監督のOKは100点。99点だとか、40点の赤点だとか、そういうのはないんです。 ――少し逸れますが、奥田さんは有言実行、不言実行どちらのタイプですか? めちゃくちゃ言葉に出します。有言実行。人はちゃんと思って考えなきゃダメだし、それを僕は口に出します。子どもの頃から。父親には「お前は口ばっかりでダメだ」と言われましたけど、「今に見ておけ」と思ってました。
――それくらいの気持ちがないといけませんね。 “気持ち”じゃないの。もっとすごいもの。今だと死語になっちゃうけど、ど根性の決意。そういう決意をもって「故郷を捨てます!」と言ったのが高校3年生の時。捨てるってことは命がけです。そうじゃなかったら、いまここに座っていません。 ■奥田瑛二 1950年3月18日生まれ、愛知県出身。1976年に俳優デビュー。79年『もっとしなやかに もっとしたたかに』で認められる。初の単独主演作となった熊井啓監督の『海と毒薬』(86)で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。『千利休 本覚坊遺文』(89)で日本アカデミー主演男優賞受賞。2001年には初の映画監督を務める。長編3作目となる『長い散歩』(06)でモントリオール世界映画祭グランプリを受賞。多岐にわたって活躍を続ける。近年の主な出演作・映画に連続テレビ小説『らんまん』(23)、『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』(21)、『アキラとあきら』(22)、『花腐し』(23)など。
望月ふみ