「関係性をそのままにしておけば......」ソフィア・コッポラが言う人生の秘訣とは?
La boîte à bijoux pour les mots précieux.ーことばの宝石箱
文筆家・村上香住子がフィガロジャポンで連載中の胸をときめかせた言葉を綴る連載「La boîte à bijoux pour les mots précieuxーことばの宝石箱」。 今回は彼女がパリで何度か見かけ、その後東京で再会することになったソフィア・コッポラの言葉をご紹介。 【写真を見る】奇跡の美しさと言われる彼女が、50歳の誕生日を迎えました。彼女のキャリアを写真でイッキ見!
ソフィア・コッポラが教えてくれた人生の秘訣
ふとしたことで、まるで業界の違う人と出会ったりすると、最初は少しくらいなら好奇心も持てるけど、やはり全然話が噛み合わなくて、関係が途絶えてしまうことが多い。やがてその人の名は、アドレス帳から消えていってしまう。自然の流れでそうなってしまうけど、ソフィアは、ちょっと待って、そのままにしていたらきっとある時、あの人に意見を訊いてみたい、という時が訪れるから、と言っている。なるほど賢明な教訓だ。 性急で、潔く、一気に斬り捨ててしまいがちな人には、耳の痛い話だ。私も若い頃は「もう今日限り絶交です」などと、いま思えば赤面する幼稚な手紙を送ったことがあったような気もする。粘り強く、その人に教えてもらいたいことができるまでそのままにしておけば、いつかまたきっと連絡したくなる日がくるかもしれない。確かに一理あるし、学ぶべきことかもしれない。
クール・ビューティーのソフィア・コッポラは、『ヴァージン・スーサイズ』(2000年)のようにピュアで、乙女心を描く映画が多いけど、本人はむしろ成熟した大人の思考ができる人なのではないだろうか。最新作の『プリシラ』もエルヴィス・プレスリーの幼妻プリシラの心理に迫って、評判になっている。 パリでショッピング中のソフィアを何度か見かけたことがある。「ボン・ポアン」で会った時は、子ども服の生地を何度も撫でまわし、その感触を試していて、いいママンなのだろうな、と感心したものだ。東京で会った時は、すでに『ロスト・イン・トランスレーション』が名作として世界的に注目を集めていた時期だった。
インタビューが終わってから「これからイタリアでオペラを演出するのですね。大変ですね」と言うと、いきなり「あなたオペラに詳しいの?」と聞かれた。「イタリアには行かないの?」とも言われ、こちらも調子に乗っていたら、もしかしたらナポリまで付いて行ってしまったかもしれない。そういう気さくなところがある人だった。 どんな人でも、生涯の知り合いなら、今度会った時に「東京でインタビューしたジャーナリストです」と言ってみてもいいのだろうか。