現役東大生の経営者が考える「使えない高学歴者」が生まれる理由「専門スキルを身につけるために、労働者や同僚としてのスキルを捨てた人が多い」
勉強はできるけど仕事はダメな「高学歴人材」はなぜ生まれてしまうのか。東大ベンチャー企業の社長として多くの東大生と日々仕事を共にしている、西岡壱誠氏の考えは。 【画像】東大生を目指す受験生は風呂やトイレでの勉強も当たり前…
『高学歴のトリセツ 褒め方・伸ばし方・正しい使い方』より、一部抜粋・再構成してお届けする。
仕事に必要な3つの能力
さて、「頭がいいからこその問題」がなぜ生じてしまうのかを、細かく検討してみましょう。 この問いを考えるために、僕はいろんな人に話を聞いてみました。 高学歴の社長さんや、高学歴が多い会社の管理職、また海外出身の方が多い職場の部長さん、海外で働いている人など、さまざまな立場の方にお話をうかがった中で、「あ、これは参考になるな」と思った話がありました。 その話を教えてくれたのは、スウェーデンで20代にして小中学校の校長先生をやっている田中麻衣さんでした。彼女はスウェーデンの学校で、多くのスウェーデン人の部下と一緒に仕事をして、まだ20代にもかかわらず立派に校長先生として活躍している女性です。 スウェーデン人という、「自分とバックグラウンドが全然違う人たち」をどのように束ねているのか、その秘密を聞くと、こんなことを語ってくれました。 「私は自分の学校で、仕事に必要な資質を3つに分類しています。 ・『先生としての能力』 ・『労働者としての能力』 ・『同僚としての能力』 この3つです。 このうち、どれか1つでも著しく欠けていると、残念ながらその人は学校には相応しくない人になってしまいます。 『先生としての能力』は言うまでもなく、生徒にいかにうまく勉強を教えられるかという能力です。親御さんとのお話の仕方とか、生徒の質問への対応などもここに含まれますね。 そして実は、スウェーデンにおいて、先生方はこのスキルがとても高い場合が多いんです。日本よりも先生になるための試験が難しいので、資格試験を突破できている時点で、先生としての能力は高いことは保証されています。 そして多くの人は、先生に求められる能力は『先生としての能力』だけだと考えていると思うんです。 でも、重要なのは『労働者としての能力』と『同僚としての能力』。こっちの能力がきちんと揃っているかどうかです。 『労働者としての能力』は、日本でいえば『社会人スキル』と言われるようなものです。上司の先生が指示を出したときにそれに従ってくれるかどうか、勤怠管理や経理などをしっかりとやってくれるかどうか、レスポンスが早いかどうか、などですね。 このスキルは正直、人によってはかなり低いこともあります。指示を出しても『なんでこんなことをやらなければならないんだ』と言って突っぱねる人もいます。 また、スウェーデンは労働者の権利についての考え方が日本よりも浸透しているので、学校という職場においてどうしてもお願いしたいことを、労働者の権利としてやってくれない、なんてこともあります。 もちろんこちらの指示が間違っている場合もありますが、学校運営全体で考えるとこの人たちは正直困った人たちになります。 もう1つ、最後は『同僚としての能力』です。 要するに、仲間としてやっていくときに気持ちがいい人かどうか、です。 単刀直入に言うと、その人がオフィスに入ってくるだけでちょっと空気が変わって、みんなが萎縮しちゃうような人。または、協調性がなくて、周りに合わせてくれなかったり、過度に攻撃的だったりする人。日本にもいますよね。 やっぱり一緒に仕事をやっていく同僚として、周囲と合わせる能力は必須です。どんなに先生として素晴らしくて、生徒からも親御さんからも好かれていても、同僚からクレームの嵐だったら困りますよね。 私は、この3つの能力が揃っているかどうかを見て先生の採用を決めます。どれか1つでも欠けている人に対してはしっかりと話をして、3つの能力の最低ラインを超えてもらえるように心がけています」