『団地のふたり』に救われた…稀有な名作になった3つの理由とは? 「真似できる」と思わせてくれることの尊さ。魅力を徹底解説
藤野千夜による同名小説を原作にしたドラマ『団地のふたり』が、11月3日(日)に最終回を迎える。小泉今日子と小林聡美が共演を果たし、放送枠がNHK BSプレミアムでありながら、幅広い層の視聴者から人気を博している。そんな同作が名作になった理由を3つのポイントから解説する。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】小泉今日子と小林聡美を観る喜び…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『団地のふたり』劇中カット一覧
“ものすごく”ではなく、“普通”であること
ドラマ『団地のふたり』(NHK BS)が最終回を迎えようとしている。連続ドラマの醍醐味である「次週の放送が待ち遠しい」という気持ちを覚えさせてくれた、秋ドラマの人気作だった。 太田野枝こと、ノエチ(小泉)も、桜井奈津子こと、なっちゃん(小林)は保育園からの幼なじみ。相手のことは言葉にせずとも何でも分かるし、ずっと一緒にいても違和感はなし。おそらく親戚よりも関係性の濃度は高い。ふたりは同じ団地で育ち、人生のライフイベントで一度は離れ、50代の現在、また団地で生活をしている。“ものすごく”ではなく、“普通”に楽しそうな雰囲気が良かった。 女性を中心に人気が高く、早くもロスが出るだろうと予想されている 『団地のふたり』。このドラマで私たちが得られたものは何だったのだろうか。
親近感のあるふたりのコーディネート
全10話を通して私自身が救われた、学んだことを並べてみたい。 まずはノエチとなっちゃんを観ていて「歳を取るのは悪いことではない」と、思えたこと。ふたりは年齢に抗うわけでもなく、かといって悠々としているわけでもない。自分たちが置かれている、団地住まいという環境を受け入れて、楽しんでいるように見受けられた。 それでも終始、気張っているわけでもない。ノエチは自分の立場をこう漏らしたこともあった。 「非常勤講師ってさ、透明人間みたいなのよね。期限が来たら『さあお辞めください。あなたの代わりはいくらでもいます』って言われているみたい」。 年齢を彷彿させる、ふたりのコーディネートも良かった。ふんわりラインで可愛いいなっちゃんに、シンプルなノエチ。無理をすることなく、個性は出ていた。他ドラマの衣装を見ていると、女優のボディラインを見ながら感嘆もするけれど「あ~、買えないわ、着られないわ」で終わっちゃうこと、あるじゃないですか。でもふたりのコーディネートは「真似できる」という気持ちになれたのが、そそられた。 寛容な時代になったと言っても、年齢を安易に受け入れて、口にできるのは10代まで。おばさんになると周囲への気遣いもたたって、口にするのを避けるシーンがしばしば。でもあのふたりなら「55ですぅ~」と笑い混じりに言うはず。そんな55歳に自分もなりたいと思った。