《ブラジル》Xマス定番菓子パネトーネの歴史=イタリア移民が世界に広める
ブラジルのクリスマスの定番菓子であるパネトーネはイタリアに由来し、その起源には諸説ある。最も有名なのは、15世紀にミラノの領主ルドヴィーコ・イル・モーロの宮廷で、シェフがクリスマスの宴のデザートを焦がし、厨房の助手トニが代わりに即興で作ったドライフルーツ入りのパンが好評を博したというものである。だから「トニのパン」から「パネトーネ」の名前が生まれたとされる。5日付CNNブラジルなどが報じた。 他にも、若いミラノ人ウゲットが、恋人のパン屋の娘を救うために特別なパンを作り上げ、彼の愛情でパン屋が繁盛し、現在のパネトーネに繋がったとの説も。さらに、ウゲッタという修道女が貧しい修道院の仲間たちにクリスマスの喜びを届けるために、果物と蜂蜜を加えた特別なパンを焼いたとの説もある。 確かなことは、中世にはすでにクリスマスの特別なパンが用意され、家長が祝祭の象徴として家族に振る舞っていたことだ。パネトーネに関する最古の文献は1606年に遡り、「ジェノバのパン・ドルチェに似た『パナトン・デ・ダネダー』」として記載されている。 レシピは何世紀もかけて改良され、1920年代にはアンジェロ・モッタという菓子職人が、バターを多く含んだ生地と特殊な紙型を用いる現在に直結する製法を考案し、円筒形で背の高いパネトーネの形が完成した。モッタの工夫により、パネトーネはイタリア全土に広がり、クリスマスの定番菓子として定着した。 イタリアから国外への広がりは、20世紀のイタリア移民によるもの。ブラジルではイタリアから移民したカルロ・バウドゥッコが、オリジナルレシピとミラノ伝統の天然発酵種「マッサ・マードレ」を持ち込み、1952年に聖市でパネトーネの製造を始めて瞬く間に人気を集めた。 バウドゥッコの成功により、ブラジルでのパネトーネ市場は急成長し、同社は世界最大のパネトーネ製造会社となった。バウドゥッコはチョコレートチップを加えた「チョコトーネ」も開発し、その名称は商標登録されており、同社だけが使用権を持っている。現在、同社は年間8千万個のパネトーネとチョコトーネを生産し、50カ国以上に輸出している。 ブラジル製菓・パン協会(Abimapi)のデータによれば、ブラジル国内では2022年11月から2023年1月にかけて約4万2500トンのパネトーネが消費され、7億2500万レアルの売上を記録した。2023年11月から2024年1月にかけての売上は31・5%増加し、3760万世帯の食卓に届いたとされている。 ミラノ発祥のパネトーネは、イタリアの伝統を受け継ぎつつも、世界各地で独自のアレンジが加えられ、クリスマスを象徴する味わいとなっている。今日ではアマゾンの食材クマルなどを使用したブラジル独自の「モコトーネ」のような商品も生まれている。ミラノで開催されるパネトーネ世界大会「Coppa del Mondo del Panettone」にブラジル代表が参加するのも恒例となっている。