「板書」ではなく「プレゼン」 神奈川県内有数の進学校を生んだ変革 教育の力 洗足学園(上)
ただ、「(小学校では)昔は女子児童を対象とした内部進学クラスがあり、エスカレーター式を望む保護者もいた」(赤尾氏)。意義、狙いを丁寧に説明し、「附属」という意識を取り外し広く視野をもつことにより、現在のような進路を希望できる校風となった。
■ICT積極導入
これにより、それぞれが独立して自分たちの教育の最高の形を出そうとか、そういう思いが実現できるような学校づくりをしていこうといった機運ができ、競争力の高い学校へと変貌を遂げた。中高、小学校の変革を支えたのは、重点的な事業に適切な予算措置が講じることができた健全な財務状況だった。学校法人の資金調達を図るものさしに「純資産構成比率」があるが、同学園は全国平均に比べて高いという。
中高と小学校の教育は「自立」「挑戦」「奉仕」と基本コンセプトが同じだが、具体的にはそれぞれの判断で教育を進めている。
中高では「教科融合」と「探究」を組み合わせた授業や、「STEAM教育」を掛け合わせた授業を多くの学年で行う。教科・科目という垣根を越えて、幅広い複眼的な視点から物事を見つめる力を身につけてもらう狙いがある。
中高、小学校ともに、ICT(情報通信技術)を積極的に導入し、知識を取り入れるインプット教育だけでなく、知識を生かすアウトプット教育に力を入れている。また児童、生徒の年齢に応じたやり方で従来の教育手法を変えたが、児童たちと同時に、教える側の意識、姿勢も変革を求められた。そうした挑戦を厭わない学園の「土壌」もまた、高い進学実績を支えている。(大谷卓)
■洗足学園
大正13(1924)年、「理想高遠 実行卑近」(高く遠い理想を、身近な日常から実行していく)を建学の精神として、敬虔なクリスチャンだった前田若尾氏が設立した。東京都目黒区にあった洗足高等女学校は昭和21年、現在の川崎市高津区久本に移転。その後、中学校や幼稚園、小学校、短期大学、大学、大学院が設立され、現在では幼稚園から大学院までの総合学園となった。