「真の生産性」を実現するリーダー術。労働習慣×脳のリズムの原則3つ
2. 量的なアウトプットよりも「能力の向上」を優先する
「忙しさ=成功」という図式がまかりとおりがちな職場文化に身を置いていると、ついついアウトプット(完了したタスクの量)だけに目を向けてしまいたくなります。 しかし、Storoni氏は量的なアウトプットよりも「能力の向上」に価値があると強調します。 アウトプットは、チームメンバーが働いていることを示します。 一方、能力の向上はメンバーのモチベーションが高く、自らのタスクに意味を見出している可能性が高いことのあらわれと言えます。 「Frontiers in Neuroscience」に掲載された神経科学の研究結果も、この説を裏付けています。 この論文のテーマになっているのが「学習進歩(Learning Progress)」という概念です。 脳は、着実に改善していることに気づくと、その仕事を楽しむようにできています。 この「自分の能力が向上している」という感覚がモチベーションに火をつけ、さらに高いエンゲージメントにつながるのです。 リーダーは、定期的にチームメンバーの動きをチェックし、量的なアウトプットに関する目標の達成だけでなく、個々の能力が向上していることを確かめましょう。 着実な向上が実現できていない場合は、仕事の割り振りを見直して、そのチームメンバーにとって、より向いているタスクを見つけるよう努めるべきだとStoroni氏はすすめています。 自分の個性によりマッチしたタスクを与えられることで、メンバーが本来備えているモチベーションに火がつくはずです。 「能力の向上は、エンゲージメントの主要な指標です」とStoroni氏は解説します。 大事なのは、より多くの仕事を完了することではなく、仕事に充実感を見出すことです
3. 創造性のひらめきを引き出す「無駄な時間」を尊重する
効率重視の人が陥りがちな罠として、ありとあらゆる非効率的な要素をあぶり出して撲滅しようとすることがあります。 しかしStoroni氏は、この考え方に異を唱えました。 つまり、何もしていない時間や別のことに気を取られている時間のような「非効率的な」時間が、爆発的な創造性の発露につながる可能性があるというのです。 脳が画期的なアイデアにつながるひらめきを得るには、手元にあるタスクに集中して「いない」ときのことが多いのです。 たとえば、同じことを繰り返すタスクの最中に、とりとめのないことを考えているときこそ、まったく関係のない問題の絶妙な解決策が浮かぶことがあります。 Storoni氏は、こうした無駄に思える時間を尊重するよう提案しています。 そして「Psychological Science」誌に掲載された研究結果を引用しながら、「脳が、自由にとりとめのないことを考えられる余裕があってこそ、創造力が花開く」と指摘しているのです。 つまり「必須とは言えないタスクをすべてカット」するのではなく、ペースを落として非生産的に見える時間も設けるべきだ、ということです。 こうした時間こそ、画期的な発想が生まれ、そうした発想が、長期的に見た生産性を高める可能性があるのです。 Mithu Storoni氏の新著『Hyperefficient』には、神経科学をベースにした、生産性に関する新鮮な視点が提示されています。 人工知能(AI)が駆動する現代社会において重要な生産性とは、必死で効率を上げようとすることや、速く働こうとすることではなく、脳の自然なリズムとシンクロさせることで、より賢い働き方をすることなのです。 創造性や集中力がピークに達する時間帯を念頭に置いて仕事の段取りを構成し、単なる量的なアウトプットよりも能力の向上を重視する。 創造的思考を促すために「何もしない時間」を尊重することで、より質が高く、意味のある仕事への扉が開かれるのかもしれませんね。 Source: Linkedin, Amazon, PubMed(1, 2, 3) Originally published by Inc.[原文] Copyright © 2024 Mansueto Ventures LLC.
長谷睦(ガリレオ)