意外と知らない、2030年頃に「患者不足」に陥るという「意外すぎる未来」
国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。 【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
有望な医療ビジネスの未来
職業として見た「医師」は、いつの時代も人気職種である。直接的に命を救うという“分かりやすい仕事”であるがゆえ、感謝されることが多い。社会的ステータスは高く、得られる報酬も多いというのが多くの人々の受け止め方だろう。 だが、医療業界もまた、人口減少の影響を免れない。 患者数を「マーケット」と呼ぶことはかなり違和感があるが、敢えてビジネスという観点で医療を捉えると、2024年までに人口ボリュームの大きい団塊世代が75歳以上となることに伴い、大病を患う人が増える見込みだ。表向きは有望な産業に見えるが、内実を調べるとそうでもない。 政府は国民の高齢化に伴って患者が増えるとの予測から2009年以降、医学部の入学定員枠を段階的に増やしてきた。一部の地域や診療科で医師不足が露呈していたためだ。 与党からの強い要請もあって、特定の地域や診療科での勤務を条件とした受け入れ枠を中心に入学定員を拡大したのである。その結果、いまや医師は毎年3500~4000人ずつ増加し続けている。 しかしながら、地域偏在や診療科偏在は簡単には解消せず、地方の中には医師不足の状況がむしろ悪化したところも少なくない。 このため2024年度から2029年度を対象とする第8次医療計画の策定に向けた検討でも、医師が不足する県などからは増やし過ぎた医師養成数を縮小することへの反対意見が出た。 さらに新型コロナウイルス感染症で医療逼迫が現実のものとなったことがあり、医療体制の充実を求める国民世論はかつてない高まりを見せている。