頼まれてはいない、でもやろう――。そんな思いで、2025年大阪・関西万博を勝手連的に盛り上げようとする大阪市の2人の男性がいる。万博誘致の段階から関連イベントなどを手がけ、草の根の活動を全国に広げている。（上野綾香） 【画像】2人が手がけた万博のフリーペーパー 　大阪の玄関口・梅田一帯で、万博開幕半年前となる13日、ユニークなイベントが開かれる。地面にテープでチェス盤（5メートル四方）を描き、イスに座った市民らに駒として参加してもらう「イスチェス」や、ダイヤル式の黒電話の受話器を取ると、メッセージが受け取れる仕掛けなどがある。 　企画したのは一般社団法人「demoexpo（デモエキスポ）」で、JR西日本や阪急電鉄などに働きかけて実現した。中心メンバーが花岡洋一さん（43）と山根シボルさん（43）だ。

万博を盛り上げようと、様々な企画を打ち出す花岡さん（右）と山根さん。カメラを向けるとおどけずにはいられない（11日、大阪市北区で）

　2人の活動は、6年ほど前に遡る。当時、官民でつくる万博の誘致委員会が、誘致に向けた機運醸成の一環で駅でポスターを掲示するなどしていた。同じ広告企画制作会社の代表を務める花岡さんと山根さんには不十分な取り組みに見え、「本気で盛り上げる気があるんか」と疑問を持った。 　誘致委員会の事務局があった大阪府にウェブサイト作成などの企画を持ち込んだが、公募を経ずには受け付けられないと断られた。ならばと思った。「自分たちで勝手にやろう」。2人ともお祭り好きな性格が背中を押した。山根さんは「大阪でせっかくやる万博なのに、スベるのが許せへんのですよ」と語る。

　早速取りかかったのが、知り合いのデザイン広告会社と合同制作した万博のフリーペーパーだ。表紙の写真は、会場の夢洲（ゆめしま）（大阪市此花区）でロケを行い、万博の歴史や誘致担当者のインタビューなどを掲載した。18年10月に約1万部を発行し、協力を得られた各地の書店や大学などで配った。 　翌月に開催地が大阪に決まり、2人は21年9月、知人らにも呼びかけて有志でのチームを結成。22年4月には、万博に興味がある人が集まって自由に語らうイベント「EXPO酒場」プロジェクトを始動させた。東京や鹿児島など14都府県で計約60回開催し、約4300人が参加。参加者の提案で独自の大阪土産を作るという取り組みも始まった。

　「みんな万博に関わりたがっているけど、どうしたらいいかわからないという人が多い」と花岡さん。大学や商工会議所などと連携した万博企画を次々と生み出している。 　昨年4月には、有志のチームを一般社団法人化した。メンバーは、サラリーマンや自営業者ら30人以上で、30～40歳代の働き盛りが多い。万博期間中は、会場が閉まる夜間に大阪の街を楽しんでもらう企画を検討している。目標は「街全体を万博会場にすること」だ。 　山根さんは言う。「万博という共通目標があると、縁のなかった人とも会話もしやすい。開幕まで半年、開幕してもまだ半年ある。みんなが万博を自分事にすれば、きっと面白い出会いがまだまだあるはず」