大谷二刀流“育ての親”栗山英樹氏が称賛とエール「60盗塁、いけそうでしょ。60本も打ちそう」
◇ナ・リーグ ドジャース20-3マーリンズ(2024年9月19日 マイアミ) 日本ハム・栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=63)が20日、史上初の「50―50」を達成したドジャース・大谷に称賛の言葉と「栗山流」のエールを送った。日本ハムの監督時代に二刀流として育て上げ、昨年のWBCでは侍ジャパンの監督として二刀流でフル回転させて世界一奪回。偉業について1年通して走れたことの意義に言及し、さらなる高みへ期待を寄せた。 大谷の偉業を都内の自宅のテレビで見届けた栗山氏は、記録達成の50号に深く感じるものがあったという。ローンデポ・パークの左翼への一発。「WBCの決勝の時、翔平がブルペンで全力投球してから最終回のマウンドへ向かった。ベンチから離れていて凄く気になったのを覚えているんだけど、そのブルペンの近くに50号が飛び込んだ。50本目にどんな物語があるんだろうと思って楽しみに見ていたけど、そういうことなのかと。野球の神様に遣わされたと言ってきたように、翔平は見る人に感動を、勇気を与える。本人が背負っている宿命、使命を改めて感じた」。しかも1試合で3連発&2盗塁での達成。「決める時は一気に行くと思っていたけど、翔平らしい。これだけ日本中のみんなに笑顔と元気を届けてくれた。感謝したい」と喜んだ。 前人未到の数字以上に、「走ること」に大谷の凄さと二刀流の意義を見ていた。打撃はいつも通り「僕が見ている天井はもっと高い。80本くらい打てるだろって思う」としたが、盗塁に関しては予想外だったという。 「右肘の状態に心配はあったけど、まさか盗塁にあれだけ興味を持ち、あそこまで進むとは。僕は米国では守る可能性が出てくるから“三刀流”と言ってきた。そこに(盗塁を加えた)四刀流を持ち込んだ。先にそっち(走ること)を持ち込んだか、という感じ」 育ての親の想像を超えた“三刀目”の盗塁。何が凄いのか。「二刀流には効率が物凄く重要。生活そのもの、トレーニング一つ一つを両方ともプラスにして絶対に邪魔させない。一人だけ48時間あるわけではないので、どう効率化するか。ダッシュ、ランニング量をどう取り入れるかという点で、盗塁を自分のトレーニングに落とし込めている。体を前に進める一つの方法になっているはずで、それができたからあそこまでいった。そこが翔平の凄さだし、発想が人と全然違う」 「投」と「打」の二刀流に、「守」より先に加わった「走」。ただし「やみくもに走って盗塁数だけを増やしているわけじゃなく、チームが勝つために走っている。盗塁はそこが最も大事。あれだけ高い確率(成功率)なら絶対に走って次の塁へ進んだ方がいい」。その高い成功率で1年間走れたことに意味がある。「相当コンディショニングが整わないと行こう(盗塁しよう)と思わない。そのコンディションを常に保てていることが実は凄くて、そこが一番突出しているところ」。日本ハム時代、昨年のWBCも「一番ストップをかけたのが翔平だった。止めて、止めて。行きたがるから。WBCの時も止めた」。体の疲労とケガのリスクを考慮した結果だが、今は体の心配はない。 盗塁がもたらす相乗効果も。「投手の癖とか動きを相当、研究している。体の動きを研究しているから、こうなったらこういう動きをするとかを見ていると思う。盗塁するために(投手を)見ていても、その先々を見ながら見ているから幅が広がる。この投手はこういう変化球を投げるんだなと考え、打席で狙い球も違ってくる。一つやることが二つ三つとつながる。二刀流ってそういうこと。それをいつも考えている選手が、こういう結果を生んだのかなと思う」 ただ、栗山氏が信じる天井はもっと高い。「50―50も一つの通過点でしかない。できそうじゃない?60盗塁くらい、いけそうでしょ。60本も打ちそうだよね」。いつか誰も想像しなかったことをやってのける。恩師にとって、「50―50」はその予兆だった。(秋村 誠人)