OpenAI日本オフィス誕生で何が変わる?日本語最適化の本当の狙いを読み解く(本田雅一)
OpenAIが日本法人を通じてやろうとしていること
日本を新たな開発の拠点とするわけじゃないの? もちろん将来的にはその可能性もあるかもしれない。しかし、現時点における主な目的は異なる。 OpenAIが提供するAIモデルやAPIが日本のユーザの中でどのように使われ、日本のユーザからどのような要望があるのかを的確に情報収集し、サービスへと反映していくミッションが最も大きく、最初の役割になっていく。 OpenAIは企業向けにChatGPT Enterpriseといった製品を提供している。ChatGPT Enterpriseは、OpenAIが提供するChatGPTのビジネス向けバージョン。企業や組織が独自のニーズに合わせ、カスタマイズ学習できるよう設計されており、自社内のデータを独自の処理インフラ内で動作させることもできる。 特に取り扱うデータのプライバシーやセキュリティが重視される企業向けに高度なセキュリティ対策やカスタマイズが提供されているわけだ。こうした顧客とのコラボレーションが必要不可欠な商品を売っていくためには、日本法人を設立する以外の方法はなかっただろう。 前述した日本語カスタムモデルの提供も象徴的な動きだ。今後も日本語環境、日本企業におけるサービスメニューや機能、AIモデルのカスタマイズといった形で、日本市場の開拓を行っていくことになるはずだ。長崎氏がトップに就任したのも、そうした事業開発を優先事項としたからにほかならない。
いずれはコンシューマユーザのサービス品質向上にも
では、一般のコンシューマーユーザにはほとんど関係のない話なのだろうか? 今回の東京オフィス設立においては、日本語カスタムモデルをChatGPTに盛り込むことに関してはほとんど話題にもならなかった。それだけ記者会見の内容が企業向けに特化していたこともある。 もっとも、今回発表された日本語カスタムモデルが直接使われるかどうかは別として、言語ごとに最適化し、効率を高めたAIモデルを用いる事は、ChatGPTを運営しているOpenAI自身にとって収益性を高めるという大きな意味を持っている。 何しろ日本におけるChatGPTユーザは200万人とも言われる。 日本語の文章が堪能になることも大きな意味を持つが、処理効率が高まることで、ChatGPTのコストが下がるのであれば、それは当然ながら運営しているOpenAI自身の利益になる。言い換えれば時間の問題で、我々はChatGPTにおいても日本語カスタムモデルを利用することが可能になるだろう。 それは遠い未来ではないと予想している。
本田雅一@TechnoEdge
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