東コレ は「ファッションビジネスの欧州流出」から抜け出せるのか? 楽天ファッション・ウィーク東京を振り返る
ビジネス拡大のカギを握るのは?
メンズブランドのデビューショーを行った「アンリアレイジ」 東京の強みはどこか。新型コロナ禍を除き、継続開催してきた安定性や若手デザイナーが発信するカジュアルウエアのクオリティー、オリジナル生地や縫製、クラフトワークの品質などが挙げられる。ストリートブランドの新陳代謝も進み、次世代のデザイナーも台頭してきた。円安基調という背景から、欧米市場への輸出も増えそうだ。 ビジネス面での狙いを定めてショーを行うことが多い「アンリアレイジ」(森永邦彦デザイナー)は、東京でメンズブランド「アンリアレイジ・オム」のデビューショーを敢行した。約3週間前にパリでウィメンズラインを披露したばかりの強行日程となったが、手仕事に焦点を当てたクリエーションでバイヤーの反応も上々。さらに東京・南青山にある直営路面店でメンズのプレオーダーショップを期間限定で展開するなど小売りと連動した戦略を進めている。同じく青山エリアにある路面店で展示商談会を実施した「ミカゲシン」(進美影デザイナー)は、以前よりも「リアルショーの重要性が高まっている。SNSでショーを観た韓国人、中国人が店舗に来るケースが増えた」と話す。自前の店舗があれば、ショーとの連動も期待できる。 デジタル(映像)形式で今季のファッション・ウィークに参加した「ミントデザインズ」(勝井北斗、八木奈央デザイナー)も、ビジネス面で手応えを得ている。勝井デザイナーは「(東京に来れない)地方のバイヤーには映像発信が有効。後に映像やSNSを観た外国人が来ることも想定している」と説明する。すでに先シーズンのSNSを見た、北米や韓国、台湾、タイからの訪日客が同ブランドの路面店を訪れており、売り上げを伸ばしている。 ファッションデザイナーの主要取引先である中国では、経済の減速で卸事業が伸び悩むブランドもある。その一方、今回のようにショーと連動した販促で結果を出すブランドも増えてきた。今後、さらに海外販路が開拓できれば、生地や加工、縫製といった国内の取引先にも良い循環をもたらす。群雄割拠のアジアで、東京はセンターになれるのか。カギは、参加デザイナーのクリエーション力が握っている。立ち止まっている時間はない。 Written by 市川重人 Image via mister it., Anrealage
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