建物が倒壊すると「自転車」を盗まれやすい…大地震のあとに起きる「犯罪被害」の実態
厳罰化を実現すべき
被災地における犯罪に対して罰則を強化することが進まないのはなぜか。条例等でも各被災地での許しがたい犯罪行為に対して厳罰を与えて、抑止効果を図るべきと思うが、この問題は抜本的改善が見られない。2016年河野太郎防災相(当時)は地震などに乗じた窃盗の厳罰化に前向きな考えを示していたし、いわゆる「災害時窃盗罪」のみならず、今や日本の被災地ではその犯罪が多様な種別に及んでいる。 私が熊本にいた時も、被災した家屋へ、デマをあおるような落書きもあったし、その治安の悪化をひしひしと感じた。被災者同士の物資をめぐるトラブル(避難所にいる者と在宅避難で物資を避難所へ取りに来る者間)もあった。被災地では大小かなりのトラブルや事件が多数発生しているが、この辺のところはあまり大きく報じられない。私は被災地・被災者に関係する犯罪の厳罰化を実現すべきと考える。私が期待するのは、その抑止効果の部分である。
「変」「恐怖」を感じたら助けを求める
実際に被災した場合に、窃盗などの犯罪被害やトラブルから身を守るためには、避難所でも安心せず、貴重品は身から離さない。女性においては特に単独行動を避ける(トイレに行くときなども)。顔見知り以外は基本身元確認を行う。自宅にいる人は不用意にドアを開けない。これは車中泊の人も同様である。自宅の空き巣を防ぐためには、家族や知り合いの男性の力をかりて、家屋の破損個所の応急修理を早めに行う。カーテンや雨戸を閉め、はしごや脚立はしまう。電池式の暗くなると点灯するライトなどを室内でつけておくとより安心である。 自宅で呼ばれてもすぐにドアを開けず、まずはインターフォンで話を聞いたり、チェーンをかけたドア越しに身分証の提示をしてもらうなどの注意が必要である。少しでも不審に思った場合は、自治体や業者の会社などに直接、電話をして確認をする。なお、自衛官の方は単独行動を原則的にしない。 おかしな行動をとる人がいたら、迷わず「助けて」「やめて」と大声を出して助けを求め、その場から逃げること。これは顔見知りが近くにいるとか、騒ぎを起こさないほうがよいとかの遠慮はしない。自分だけでなく、皆が安全でいるために、「変」「恐怖」を感じたら助けを求め、逃げることをためらわないことである。
古本 尚樹(防災・危機管理アドバイザー/医学博士)