2024年、この世を去ったスターたちの最高傑作は?(3)圧巻の貫禄…“稀代の色男”が最期に残した名演
映画界を彩り、国民に感動を届けてくれたスターたちの訃報が続いた2024年。今回は、今年、惜しまれつつ旅立った名優たちの輝かしいキャリアや代表作を振り返り、それぞれの人生を象徴する名作を厳選して紹介する。スターたちが残した魅力と功績に敬意を表しながら、映画界に刻まれたその軌跡を辿る。第3回。(文・村松健太郎)
火野正平『ラストマイル』(2024)
俳優だけでなく歌手としても活躍した火野正平は1949年に生まれた。12歳の頃には劇団に所属しているので、子役からキャリアを始めたことになる。 映画デビューは1966年。その後1970年代に入ると一気に映画の出演本数が増える。その後、2024年の『鬼平犯科帳 血闘』、『ラストマイル』までほぼ毎年の様に出演映画が公開され続けた。 1980年代はプレイボーイとしてワイドショーを賑わす存在にもなった。後年にモテる男性有名人の事を“~の火野正平”と評するのはここから来ている。かつてはロングヘア―のワイルドな風貌だった時もあったが2000年代辺りからスキンヘッドに近い髪型になり、この風貌で彼を認識している人も多いのではないだろうか。 映画デビュー以降、50作品以上の映画に出演してきた火野正平の出演作品から一本選ぶとなるとなるとかなり難しい。特に脇役でいい味を出すことも多いので、難題と言える。そんな中で最も新鮮な記憶を持っているということで遺作となった『ラストマイル』を挙げたい。 興行収入59.1億円を超える大ヒット(実写邦画としては『キングダム大将軍の帰還』に次ぐ年間2位)作品となった本作は、ブラックフライデーを控えた巨大物流センターを舞台に起きる謎の連続爆破事件を描いた社会派エンターテイメント作品である。 火野正平は物流の末端のベテラン配達員を演じ、物流という巨大なシステムの悲哀の部分を体現する絶妙な演技を見せている。これから観る方は、名優がみせた最後の雄姿に注目してほしい。 (文・村松健太郎)
村松健太郎