ウクライナが東部のポクロウシク方面に増援部隊を投入 現状は「焼け石に水」か
ウクライナ軍はまだ数個旅団を温存しているもようだ
カラダフ旅団は南部の旅団で、拡大後の戦争の初期には南部の都市メリトポリの北で戦い、その後2年間もおおむねその方面にとどまっていた。しかし、国家親衛隊が志願者に「前線での戦闘を保証する」と約束しているとおりと言うべきか、カラダフ旅団は最近、拡大して3年目に入る戦争で最も戦闘が激しい地域になっている東部に転戦することになった。 もっとも、カラダフ旅団が投入されてもポクロウシク正面でロシア軍の前進は止まっていない。ロシア側の一部の観察者は、ウクライナ軍の残りの予備部隊はどこにいるのだろうかと詮索している。ウクライナの戦線のどこかの塹壕に入っていなかった部隊のうち、多くはロシア西部クルスク州への侵攻に加わっている。 それでも、ウクライナ軍の100個旅団などから成る地上戦闘部隊のうち、まだ数個の旅団が国内のどこかで温存されているはずだ。ロシアのプロパガンディスト、エフゲニー・ノリンは「ウクライナ軍には、あまり傷ついておらず、装備の整った予備部隊がまだ数個あることがわかっている。おそらく5個前後の旅団だろう」と述べている。 ではなぜウクライナ側はこれらの部隊を、死活的に重要な補給線を守るためにポクロウシク正面に急派していないのか。ノリンは2つの可能性を指摘している。それらの部隊を「ほかの場所に投入するつもり」か、東部の「戦線が完全に崩壊する前に、何らかの決定的な影響を与えることを狙っている」かだ。 「ほかの場所」は、ウクライナ軍による侵攻が開始から1カ月近くたつ現在も止まる気配のないクルスク州かもしれない。クルスク州で兵力を増強し、ポクロウシク正面で兵力を現状維持するのであれば、ウクライナの指導部は、クルスク侵攻で得られるもののほうが東部で失うかもしれないものよりも、戦争の帰趨にとって重要なものになるという賭けに出ることになる。 これはきわめて危険な賭けだ。
David Axe