黒字でもリストラに着手、変わる日本企業-24年は3年ぶり1万人超え
(ブルームバーグ): 最後の手段と見なされてきたリストラに、最終損益が黒字の段階でも着手する企業が増えている。民間調査によると、2024年に早期・希望退職募集を実施した上場企業のうち、約6割が直近の決算で最終黒字だった。
東京商工リサーチが10日発表した調査によると、24年には57社、約1万人の募集が判明し、2023年の41社、3161人から急増した。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた20年と21年に次ぐ水準で、1万人を超えるは3年ぶりだ。
日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、12月は製造業で改善したほか、非製造業も高水準を維持する。景況感が特段悪くない中、リストラに着手する企業が増えている背景に、識者からは企業間の格差拡大を指摘する声もある。
PwCジャパングループで経営戦略の策定などに特化した部門であるPwCコンサルティング Strategy&の北川友彦執行役員は、コロナ禍のショックから回復した企業もあれば、同じ業種、業態内で出遅れた企業は苦戦を強いられ、「優勝劣敗」の傾向が強まっていると指摘。時間をかけても追いつけないと判断し、業績悪化を防ぐため、先んじて事業再編に踏み切るインセンティブが経営者の間で高まっているとの見方を示す。
23年に東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営を上場企業に求めたことや、物言う株主(アクティビスト)が日本でもかなり活動を活発化させていることも影響していると、一橋大学の野間幹晴教授は話す。「企業価値を高めるために事業ポートフォリオの組み替えに取り組む結果、希望退職を募る」動きが起きていると見る。
「将来的な負債の軽減」という意味も大きく、退職給付債務などの直接的な金銭負担を削減するだけでなく、日本型の雇用慣行によるところの事業改革上の心理的・法的障壁を取り除く効果も小さくないという。
ミドル世代も転職
雇用削減が企業の戦略的オプションとして受け入れられるのに伴い、人手不足の深刻化で転職の場が40代以上のミドル世代に広がり始めたことも最近の傾向だ。リクルートホールディングスリサーチセンターでセンター長を務める津田郁氏は転職市場における「価値創出の形が変わり始めた」と感じている。