松本若菜が保ち続けるまっすぐな芯 『西園寺さんは家事をしない』は満を持しての主演作に
7月9日より放送スタートとなる連続ドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)。主演オファーに際し、「嘘ですよね?」と“驚きとうれしさと感謝”の第一声を発したという松本若菜だが(※1)、これが松本のGP帯初主演作との事実に「やっとですか?」の意味での「嘘ですよね」の声が漏れた視聴者も多いはず。2007年の『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)でのデビューから18年。ここまで長かったが、『西園寺さんは家事をしない』は松本にぴったりの役になりそうだ。 【写真】松本若菜の名前を世に知らしめた『やんごとなき一族』
“松本劇場”で名前を世に知らしめた『やんごとなき一族』
ここ数年、そこかしこで「遅咲き女優」と称されてきた松本。なんとも失礼な表現に聞こえるが、そのたびに松本は「私、いま咲いてますか? そう皆さんが思ってくださっているのでしたら、嬉しいです」と笑顔で応じてきた。(※1)ブレイクと呼ばれるきっかけを作ったのはドラマ『やんごとなき一族』(フジテレビ系)での深山一族の長男の嫁・美保子役。目を見開き、あえての大仰な芝居を、身振り手振りを交えながら振り切って演じて、“松本劇場”と大好評を博した。松本の美貌と、培ってきた演技力が十分に生きた役であり、ブレイクは至極当然の結果といえた。 “松本劇場”で彼女を初めて気にした人は「あの振り切った美人は誰?」と思っただろうが、もともと松本を観ていた人たちは「いまごろか」と思っていたのである。 改めて、松本のデビューは佐藤健が主演を務めた『仮面ライダー電王』(2007年~2008年)。主人公・良太郎の面倒をよく見ている姉の愛理を演じた。喫茶店「ミルクディッパー」の店主をしており、初回から彼女目当てで通う客が多く登場する設定は、十分に説得力があった。彼女には「『電王』のときから好きでした」というデビュー作からのファンも多いのだ。 2009年には『腐女子彼女。』で、大東駿介(当時の芸名は大東俊介)とともにW主演を務め、これが映画初主演となった。大学生の彼氏を持つ腐女子の年上彼女として、コミカルな面を披露している。しかし彼女の魅力がより生きてきたのは、やはりキャリアと年齢を重ねてからだろう。 『やんごとなき一族』よりも早く、2017年には映画『愚行録』での演技で、映画界では俳優としてその力をすでに高く評価されていた。『愚行録』は、これまでの日本映画にない空気を放つ、『蜜蜂と遠雷』『ある男』の石川慶監督による長編映画デビュー作であり、松本は、美しい笑顔の奥に幾層もの心情や企みを感じさせる人物を、巧みに演じた。本作で第39回ヨコハマ映画祭にて助演女優賞に輝いている。 2018年の映画『ピンカートンに会いにいく』では、内田慈、山田真歩らとともに、再結成を計ろうとする元アイドルグループのひとりを演じた。松本が扮したのは再結成の鍵を握る、かつてグループ内で一番人気だったメンバー。内田とのガチンコ芝居に心をつかまれる。また、元メンバーたちがアイドル時代の衣装を着る場面があるのだが、松本のクールな空気感がとてもいい。