「星になった娘に『頑張ったよ』と言えれば」白血病で急死した9歳の娘から母が授かった「新しい使命」
その6ヵ月後、佐知ちゃんの状態は厳しいものに。 「’21年5月に佐知は亡くなったのですが、6ヵ月前に非常に厳しいことを医者から告げられ、8日前には佐知が望んだように自宅に帰りました。当時の気持ちは、現実を受け止める自分、そして、奇跡を信じる自分、って気持ちが入り混じっていましたね。どこかで覚悟があったのでしょうか、佐知のお葬式の夢を見てしまって、それに自己嫌悪したりして」 そして安藤さんは、残された時間を後悔なきよう、佐知ちゃんと生活を共にした。 「亡くなる前、コロナ禍で制限される中でしたが、病院の敷地内でシャボン玉したり、スライム作りをしたり、また一時退院して、家族で出かけたりと、かけがえのない思い出を作ることができたかなと。やりたいことをたくさんしてあげられたかなって思います」 佐知ちゃん、’21年5月19日永眠。 「その後も、佐々木さんが大活躍してくれて。病院には、佐知のお友達もたくさんいます。そこで、どうすれば佐知がいなくなってしまったことをお友達に伝えることができるのか思案してくれたんです」 それが“プラネタリウム”だった。 「病院のプレイルームでプラネタリウムをみんなで見て、空につながっていくっていうことを表現して、亡くなったことをないことにせず、星が紡いでいく、導いてくれることを、子どもにも理解できるように、上手に表現してくれたのです」 佐知さんが紡いだのが、愛知のこどもホスピス設立に向けての活動であった。安藤さんは佐知さんが亡くなるまでホスピスの存在を知らなかった。成人のホスピスが果たすような、死が迫っている患者さんやその家族の苦痛を最小限にすることだけでなく、小児がんや難病のお子さんを看病する家族の休息のために一時的に預かる役割も果たしている。そのようなケアプログラムは、住まいの愛知にはなかった。現在、病院併設ではない、医療や福祉の制度から独立したコミュニティ型のこどもホスピスがあるのは、横浜と大阪の2ヵ所だけだ。 現在、安藤さんは、こどもホスピス設立に向けての活動とともに、生命を脅かす病気や障がいのある子どもとそのきょうだい・家族が参加できるイベントをさまざまな企業や個人からの支援や協力のもと、進めている。 「佐知を通し、こどもホスピスの重要性を知ったので、残りの人生をこの活動に費やし、いつか佐知に会える時に『ママもあれからいろいろ頑張ったよね。さっちゃんもたくさん応援してくれて一緒に生きてくれてありがとう』って言えればいいなと思っています」 取材・文:中西美穂 ノンフィクションライター。NPO法人サードプレイス代表。元週刊誌記者。不妊治療によって双子を授かり、次男に障害があることがわかる。自身の経験を活かし、生殖補助医療、妊娠・出産・育児、障害・福祉を中心に取材活動を行う。本人ツイッター(@thirdplace_npo)
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