別れた夫の悪口を子どもに言わなかった母の思い 2人の「ひとり親の子育て」を通じて感じたこと
特別支援学級の対象となる子どももそうでない子どもも、すべての子どもがともに学べる学校、大阪市立大空小学校の初代校長の木村泰子先生。 そんな木村先生の、「自分を支える何か」がほしいすべての人に向けたメッセージが詰まった本『お母さんを支える言葉』より一部抜粋し、3回に渡って掲載します。 第2回は、木村先生が忘れられないと語る親御さんのエピソードです。 ■ほめて成長するのは、親も同じです 忘れられないお父さんがいました。
父子家庭で息子と2人暮らし。母親は好きな男性ができて、息子がまだ低学年くらいの頃に家を出ていったきりでした。 息子が小学校を卒業して数年後、父親が突然職員室に現れたんです。 「校長先生、息子が高校を無事卒業してん!」と満面の笑顔。傍らには、すっかり大人の顔になった息子がいました。 「えー、おめでとう!」 私は、子どものほうを向いて笑顔を返したのですが、それを見て父親は、 「先生、子どもちゃう! 自分をほめて!」
って言ったんです。 私はハッとして、「父ちゃん、よくがんばったなー!」って、その父親の頭をなでました。それを見て、その場にいた職員室のみんなが、涙を流していました。 ■問題児ならぬ問題“父”の存在 このお父さん、男手一つで子育てをしていて、苦労も多かったのですが、同級生の親ともめごとを起こすこともありました。 ただ、親はどうであれ、子どもの学校生活や学びは、守らなくてはいけません。だから、教職員も同級生の親たちも、息子とはずっと話をしていましたし、息子の話には耳を傾けていました。
「父ちゃん、こんなことしてん」ってしょんぼりして打ち明けられたときは、「そうか。父ちゃんも必死やねんな。でもさ、いろいろ思うけど、あんたはまだ子どもやん。だから、大人(父ちゃん)のことは、ほっとき。大空小にはこれだけ大人がいてるやん。困ったら誰にでも助けを求めや」って。 同級生の親たちも最初はひいたり、「あんな親、どこか行ってほしい」という態度すらもうかがえました。でも、父親が何か問題を起こして、やり直し(反省)をするたびに、そのことを周囲で共有しました。