ウルトラマン、ジョジョ、高倉健、都市伝説!「ダンダダン」の引用&独自性を考察
2021年にマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で連載開始し、看板作品の一つにまで上り詰めた人気作「ダンダダン」。23年11月には累計発行部数320万部、閲覧数3億6000万超に到達し、24年10月よりテレビアニメがTBS系で放送中だ(動画配信サービスでも配信中)。 【写真】自由で躍動感あふれる画面構成が、見る人に世界観をたたき込んでいく 「ダンダダン」第8話より
ジャンル、オマージュ詰め込んだ〝闇鍋〟
妖怪に呪われ、その能力を一部使えるようになった男子高校生・オカルンと、宇宙人と遭遇し、超能力に目覚めた女子高生・モモが、さまざまな怪異に立ち向かっていく本作。その魅力の一つは、「チェンソーマン」「地獄楽」のアシスタント経験を持つ著者・龍幸伸の圧倒的な作画力と、ホラー、アクション、青春ラブストーリー、コメディーなどなどのジャンルを横断する自由かつ斬新な作風&物語展開にあるといえる。さらに古今東西のオカルトから映画、アニメ、ゲームへのリスペクトがこれでもかと詰め込まれており、さながら〝闇鍋〟的面白さがある。 ターボババア(100キロババア)やカシマレイコ、THIS MANといった都市伝説、高倉健の「自分、不器用ですから」に(オカルンの本名が高倉健)、「ジョジョの奇妙な冒険」のオマージュとみられる「てめえはウチを怒らせたぜ」といったセリフ、直近のエピソードには「ウルトラマン」のゴモラとレッドキングをミックスさせたような怪獣やさくらももこの「コジコジ」を想起させるキャラクターが登場し、「ジュマンジ」や「ミュータントタートルズ」「ストリートファイター」などからの引用が見られる。物語を追うだけでなく、オマージュ元を探す楽しさも内包しているのだ。
製作、キャストはバケモン的布陣
そうした特徴が一層強化されたのが、大いにバズを引き起こしているテレビアニメ版だ。「四畳半タイムマシンブルース」「犬王」などで知られるアニメーションスタジオ、サイエンスSARUがアニメーション制作を手掛けており、同社の「映像研には手を出すな!」「平家物語」に参加した山代風我が監督を担当。シリーズ構成・脚本は「呪術廻戦」「チェンソーマン」の瀬古浩司、音楽は「映画 聲の形」「チェンソーマン」「チ。 地球の運動について」の牛尾憲輔、キャラクターデザインは「ベルセルク」「PSYCHO-PASS」の恩田尚之などなど、まさに「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」的な布陣になっている。キャスティングにおいても、モモ役の若山詩音、オカルン役の花江夏樹に加えて、主人公サイドのアイラやジジを「僕のヒーローアカデミア」の佐倉綾音と石川界人という若手実力派が演じているのに対し、ターボババア役を田中真弓、セルポ星人を中井和哉、アクロバティックさらさらを井上喜久子、ドーバーデーモン(シャコ星人)を関智一と、敵キャラクターをベテランが固める構造になっているのが興味深い。さらに主題歌はOPをCreepy Nuts、EDをずっと真夜中でいいのに。と、人気ミュージシャンを起用。 そのOP映像だが、明確に「ウルトラマン」へのオマージュが見られる。「ウルトラマン」のOPといえばウルトラマンや怪獣を影絵で表現した演出が有名だが、そっくりそのまま引用されているのだ。かつ、モモが躍動するときに揺れるイヤリングが一瞬ウルトラマンの目に見える、というなんとも粋な演出が施されている。当然ながら原作にはOP映像はないが、アニメ化された際にその精神性が継承されている点が心憎い。こうした「いいぞもっとやれ」感が、アニメ「ダンダダン」が原作ファンからも支持を得ている理由の一つだろう。