七回、適時打を放つ巨人・坂本勇人＝甲子園球場（松永渉平撮影）

巨人1－0阪神（23日、甲子園） 0－0の七回無死一、三塁。巨人の阿部監督が代打に送ったのは、不調の坂本だった。22日の阪神戦では3度の得点機を不意にした35歳に、指揮官は勝負を託した。「やっぱりね、一番いろんな修羅場をくぐってきている人たちなので」 攻めあぐねていた先発高橋から吉川、岡本和の連打で作った得点機。坂本は「いい場面で回してくれた。なんとかしないといけないという思いだった」。追い込まれてからの5球目。外低めの速球に逆らわずバットを出した。打球が二塁手の頭上を越えると、駆け出しながら叫んだ。 幾度の試練を乗り越えてきた18年目のベテランも、完封負けした前夜の試合は責任をしょい込んだ。「野球人生でもあそこまで悔しい思いはしたことがなかった。情けないな、と」。ここ5試合で21打数2安打。状態は上がり切らなくても、ここぞの場面で勝負強さが光った。 「信じてよかった」と阿部監督。1点を守り、マジックを「4」に減らした。油断はない。それでも、甲子園の一角に陣取った巨人ファンを見つめて坂本は言った。「若手、ベテラン一丸となって優勝します」。歓喜のゴールはすぐそこまで近づいている。（川峯千尋）