子どもがアンチエイジングに夢中になり肌のトラブルが続出、背景には一体何が? 米国
子どもたちへの影響と社会的な問題
明白な疑問が1つある。子どもの敏感な(そして、最初からしわのない)肌が、しわをなかったことにする強い成分に耐えられるかどうかだ。実際、アレルギー反応やトラブルの報告が後を絶たない。また、しわができる前に打つ予防的ボトックス注射もトレンドになっているが、若い肌にどのような影響を与えるのか不明だ。 しかし、このような現象を目の当たりにするたびに私は、オンラインで年老いた顔を見る機会がこれほど少なくなると、子どもたちの現実感や、自分自身が老い始めたときの自己認識にどう影響するのかが心配になる。 ハード氏は別のことを恐れている。「アンチエイジング」商品への関心の高まりが偏見を永続させることだ。 「私たちは加齢に対抗しているという事実が人々の顔に表れています」とハード氏は話す。「私たちは加齢を恐れるべきであり、できれば闘うべきだという考え方を売り込んでいるのです」 このような恐怖は、何気ない年齢差別から、高齢者を排除して人間性を奪い、危険にさらす制度的・社会的慣行まで、高齢者に現実的な影響をもたらすとハード氏は指摘する。ハード氏の研究は、こうした社会的偏見が高齢者、特に高齢女性の自尊心を傷つけることを浮き彫りにしている。 自己認識は始まりにすぎない。老いた外見は、就職での差別、恋愛の相手を見つけにくいという問題、「社会的価値」の喪失のすべてに関連している。さらに、年齢差別が高齢者の虐待を助長することもある。このテーマに関する研究はまだ初期段階だが、高齢者の虐待とそれを容認することとの関連性が解明されようとしている。 「アンチエイジングという言葉には問題があります」とハード氏は言う。「しかし、私たちはそれを受け入れています」 しかし、受け入れる必要はない。そして、セフォラ・キッズの流行は私たち大人に、加齢に対する考え方を見直す機会を与えてくれているのかもしれない。 自分の顔を凝視し、美しい頬骨を演出しようと努力する代わりに、しわやたるみ、傷痕が増えることは名誉なことだと考えてみてはどうだろう? フィルターの見分け方、ディープフェイクの見破り方、写真編集の痕跡の見つけ方を子どもたちに教えてはどうだろう? 絵空事に聞こえるかもしれないが、ハード氏によれば、年齢差別と戦う現実的な道がある。高齢者の支援を目的とした政策を支持する、年長者と知り合う、社会生活で多世代が混ざり合う手段を探すといった方法だ。 ハード氏と話して電話を切った後、私は「夜用美容液のアップグレード」をリストから消し、次に鏡の前を通るときは、そこに自分の43年間の経験を探してみると新たに書き込んだ。私の内なる年齢差別と闘うときが来た。
文=Erin Blakemore/訳=米井香織