『ゴジラ-1.0』は歴代No.1イケメン? 過去作からたどるゴジラのルックス変遷
11月3日に映画『ゴジラ-1.0』が公開されて以来、同映画に登場するゴジラが“イケメン”だと話題になっている。ゴジラに対してイケメンというワードはあまりピンと来ないかもしれないが、歴代シリーズを見比べてみると、なんとなく意味がわかってくるから不思議だ。そこで今回は映画公開にちなんで、歴代ゴジラのルックスを改めて振り返りたい。 【写真】少しずつデザインが変更されてきた、歴代ゴジラのルックス ゴジラはその誕生から今に至るまで、少しずつデザインが変更されてきた。まず初代『ゴジラ』は、いかにも“怪獣”といった恐ろしさを感じさせるデザインだった。 特徴的なのはその“目線”で、逃げ惑う人々を見下ろすように下を向いている。初期のゴジラは「水爆大怪獣」と銘打たれていたように、水爆実験から生まれた恐怖の象徴としてのモンスターなので、それを表現するために凶悪なデザインが採用されたのだろう。現代でも通用する秀逸なデザインだ。とはいえ、あまりイケメンといった雰囲気ではない。 そんなゴジラも時を経るにつれて、いつしか人間ではなく同じ怪獣と戦うようになる。そしてスタイリッシュで憧れの目線を向けられるゴジラは、大体この頃に作られたデザインが多いようだ。 例えばファンの間でもイケメンと名高いのが“ビオゴジ”。1989年に公開された『ゴジラVSビオランテ』に登場するゴジラで、同作ではタイトルの通り「ビオランテ」という植物型の怪獣と戦うことになる。 そんなビオゴジはこれまで通りどっしりした恐竜っぽい造形だが、初代と比べると精悍な顔つきに。目線が下ではなく正面やや上を見ているため、怖さよりもかっこよさが前面に押し出されたのかもしれない。
イケメンゴジラとかわいいゴジラ
このようにゴジラの目線はどの作品でも“戦う相手”に向けられており、ビオランテのような巨大生物と戦う時は、目線が“正面やや上”を向いていることが多い。 1991年に公開された『ゴジラvsキングギドラ』も同様で、ゴジラの目線は正面やや上。そして“ギドゴジ”も、イケメンなデザインのゴジラとしてよく挙げられる。やはり目線が上に向くことで三白眼気味になり、恐怖よりもかっこよさが際立つようになったのだろう。 またそれ以前にはゴジラがヒーロー化した時代があったが、その頃はあまり「イケメン」とは言われない模様。たとえば『ゴジラ対メガロ』のゴジラ、通称“メガロゴジ”はスマートな体型に大きな目という、どちらかといえばかっこよさよりも愛嬌を感じてしまう造形だ。大人が見る社会派怪獣映画ではなく、子どもが楽しめる特撮ヒーロー映画にシフトしていったことで、より親しみのあるデザインになっていったものと考えられる。 時代やニーズによって姿を変えていったゴジラだが、『ゴジラ2000 ミレニアム』ではまた新機軸のゴジラが誕生した。同作の“ミレゴジ”はまだ成長しきっていないやんちゃな個体という設定もあってか、どちらかといえばスマートなシュッとした顔つき。しかしメガロゴジのような愛嬌はなく凶悪な顔つきで、これまでよりも大きな背びれも相まってより恐竜っぽさが強調されたスタイリッシュなイケメンだった。 ただ凶悪な顔であればイケメンかと言われればそういうわけでもなく、2016年に公開された『シン・ゴジラ』のゴジラはただただ恐怖の象徴でしかない。思えば『シン・ゴジラ』はそういった意味でも「VS人間」だった頃の初代『ゴジラ』に原点回帰したような作品で、目線もちゃんと“下”を向いていた。 ともかくイケメンでもイケメンでなくても、ゴジラの造形にはその作品のテーマやコンセプトが詰め込まれている。なぜ『ゴジラ-1.0』でイケメンになったのかを考えれば、作品をさらに深く理解するための手掛かりになるかもしれない。
キットゥン希美