国鉄民営化! 1986年の公約「楽しい旅行を企画します」は結局、守られたのか? 改めて考える
募集型旅行の収益構造
そのような状況のなか、東急の「ROYAL EXPRESS」が2020年8月28日よりJR北海道管内で営業運転を開始した。これを皮切りに、2024年1月26日からはJR西日本・JR四国管内でも営業運転が行われた。 さらに、2024年11月8日からは、東急とJR東海が共同で、横浜駅とJR東海静岡エリアの間での運行を始める。これまでのROYAL EXPRESSの運行では、車両の提供や輸送、運行などで、JR貨物やJR東日本なども協力している。 少なくとも募集型企画旅行として運行されるクルーズ列車では、たとえJR会社間にまたがって運行される場合であっても、運賃・料金の分配の手間は省かれる。 原則として、料金は募集型企画旅行を主催した会社が総取りし、他社へ乗り入れた場合には ・線路使用料 ・運行委託料 などを支払えば済むと考えられる。 募集型企画旅行によるクルーズ列車では運賃・料金のJR会社間の分配を回避することで収入の減少が抑えられることを、JR他社への列車取り入れの後押しにできるはずだ。こうした利点を生かし、クルーズ列車の恒常的なJR会社間の直通運転を実現してほしいものである。
観光列車の地域活性化
JRグループでは、募集型企画旅行以外でも、乗車券に加えて追加料金を支払うことで乗車できる観光列車が各地で運行されている(ただし、追加料金を必要としない観光列車を運行しているJR四国予土線の例もある)。 例えば、JR四国の「伊予灘ものがたり」は、マスメディアが実施した観光列車ランキングで複数回 「第1位」 に輝いている。伊予灘ものがたりは、松山~伊予大洲・八幡浜間を予讃線伊予長浜経由で結ぶ。予讃線向井原~伊予大洲間(伊予長浜経由)は2023年度の1日平均通過人員(輸送密度)が321人と低く、JR四国が路線のあり方について自治体との協議を希望する3路線(予讃線伊予長浜経由のほか、予土線および牟岐線阿南~牟岐間・牟岐~阿波海南間)のひとつに入っている。しかし、 ・高野川~伊予長浜で見られる瀬戸内海 ・伊予長浜~伊予大洲間で並行する肱川と山あいを縫うようにして走る車窓風景 ・大正時代に開業し開業後100年を超えた伊予長浜~伊予大洲間の鉄道資産 ・青春18きっぷのポスターに採用された下灘駅 などは文化的な資産といえる。伊予灘ものがたりの魅力は予讃線伊予長浜経由の素晴らしい車窓風景や鉄道資産をゆったりした列車のなかから食事をしながら楽しめる点にあるが、前出のJR四国の川崎氏は 「伊予灘ものがたりの人気は、沿線住民などによるお手ぶりやおもてなしにより支えられている」 と付け加える。2024年6月24日に青森県弘前市で開かれた、弘南鉄道大鰐線を中心とした公共交通のあり方について沿線住民の意見を聞くワークショップのなかでは 「大鰐線が走る風景は文化になっており、絶対に残ってもらいたい」(ABA青森朝日放送のウェブサイト) との意見も出たとの報道もあった。