国鉄民営化! 1986年の公約「楽しい旅行を企画します」は結局、守られたのか? 改めて考える
観光利用促進の現実策
こうした状況の下、JR四国の採算改善に向けた現実策は、観光利用の促進ということになるだろう。 同社は四国4県の国立大学と連携して実施している「地域観光チャレンジ」のなかで、学生が発表した旅行プランの一部を商品化している。2024年3月から5月には、 ・『藤の花×遊山箱!エシカルに#ヌン活 ~フォトジェニックに楽しむエシカル消費とは?~』(徳島大学、2024年4月20日、日帰り) ・『土佐の地酒と食、まちあるき~歩いて紐解く高知の食文化~』(高知大学、2024年3月17日、日帰り) ・『食と酒で感じる清流・四万十川~人々が受け取った四万十川の恵みとは?~』(高知大学、2024年5月16~17日、1泊2日) という三つの企画が旅行商品として発売された。 ここで、他社の状況を見てみる。2021年度「鉄道統計年報」によると、大手私鉄各社の旅客運輸収入に占める定期収入はおむね40%前後から50%程度である。2023年度のJR各社の旅客運輸収入に占める定期収入割合は、 ・JR北海道:18.2% ・JR東日本:24.9% ・JR東海:4.0% ・JR西日本:19.3% ・JR九州:20.8% であった(JR東海、JR西日本は2022年度)。JR各社の定期収入割合は大手私鉄と比べると総じて低く、観光利用を促進する必要性が高いといえる。 JRグループの観光誘客の取り組みとしては、JR旅客6社が共同で、旅行会社や地元自治体、観光事業者などと連携して、四半期ごとに開催している 「デスディネーションキャンペーン(DC)」 がある。国鉄時代の1978(昭和53)年から開始された歴史ある旅行キャンペーンであり(「トレたびウェブページ」)、旅行会社と共同して旅行商品の発売を行っている。
豪華クルーズ列車の魅力
そして、JRグループの多くの会社が、 「観光列車」 の運行を行っている。そんななか、廃止された夜行列車に代わるかたちで、宿泊をともなうクルーズ列車が運行されるようになったことが特筆すべき点として挙げられる。 JR九州が2013年10月15日に運行を開始した「ななつ星in九州」は豪華な車内で車中泊しつつ、九州各地をめぐる。唯一の定期夜行列車である「サンライズ出雲・瀬戸」との違いは、「サンライズ出雲・瀬戸」は通常の乗車券+特急券で乗車できるのに対して(寝台利用の場合は寝台券も必要)、ななつ星in九州は団体専用列車であり、 「募集型企画旅行のかたちで参加する必要がある」 という点にある。後に登場したJR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、およびJR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」も募集型企画旅行である。 ・ななつ星in九州:65万円(2名1室)~ ・TWILIGHT XPRESS 瑞風:38万5000円(同)~ ・TRAIN SUITE 四季島:44万円(同)~ と高額となっている。 上記のクルーズ列車は、TRAIN SUITE 四季島の一部のコースが函館エリアへ乗り入れる以外は、原則として自社管内を周遊する。日本ではバブル崩壊以降、株主価値重視の風潮が広がり、JR各社は採算改善に向けて自社管内路線の利用促進や効率化を進めた。その結果、在来線ではJR会社間の直通列車は削減され続けた。