スーパーラグビー参戦が決まった日本の抱える問題点
もっとも、会見に出た田中は、現実の厳しさも指摘した。質疑応答で「いまの日本代表がスーパーラグビーに入ったら」と聞かれ、「正直、下の方」と即答している。事実、今秋に「JAPAN XV」として挑むもホームで2連敗を喫したマオリ・オールブラックスは、そのスーパーラグビーの予備軍級の選手が大半を占めていた。田中は言う。 「これが日本ラグビーのスタート。1、2年はしんどい戦いが続くと思うんですけど、(自身の参加を問わず)そのなかでも世界と対等に戦えるチームを作っていきたい」 加えて、「誇りと同時に大きな責任も感じている」と話した矢部専務理事は、参画に向け抱えている多様な課題を指摘された。 参戦に伴う国内シーズンの日程調整については「SANZAR(スーパーラグビーの母体)が日程を出してきていない」こともあって具体案はなし。南アフリカ、シンガポールなど各国を転戦するための移動費は「スポンサーシップと入場料収入」でまかなうというが、その「スポンサー」の詳細は「決まっていません。色々なところとお話しているということです」という。 なかでも切実な問題は、選手のサラリーだろう。 国内最高峰のトップリーグの選手にはチームの母体となっている企業の社員選手も多い。スーパーラグビーは最長で2月から8月までの拘束期間があるが、そこへトップリーグのチームが選手を出すには、相応の条件があるだろう。「そういうところも…これからですけど…」と言葉に詰まる矢部専務理事は、各企業からの「出向」という形でメンバーを招集したいようだ。しかし、その折に重要となる故障した場合の保障問題については明確なビジョンが示せなかった。 国内外2チームとプロ契約を結ぶ田中は、周りの社員選手を慮った。 「怪我をした時のことを考えておかないと、企業が社員選手を出してくれないと思います。あと、チームができたら皆、ホテル住まいになると思うんですけど、そこに家族が来られるようにしてあげないと。家族と会う時間がなくなってしまうことで、(選手によっては)嫁に『行かないで』と言われることとかもあると思うんで」