「町内会をやめたい」→「災害時に助けてもらえないからね」と拒否…退会できないのは違法では?
●エスカレートすれば罪に問われることも
――退会しようとした人に対して「災害時には助けてもらえないからね」「白い目で見られる」などと声をかける行為には、法的な問題はないのでしょうか。 確かに町内会に入っていないことによって、災害時に町内会で備蓄している食料品や日用品の供与を受けることなどはできなくなります。 そのため、親切心で「そういった不便があるよ」と教えること自体は、問題ありません。 ですが、それを超えて「助けてもらえない」「白い目で見られる」などと半ば脅すように言うことは、威圧的な言動により他者を精神的に追い詰めることになるので、精神的苦痛を与えたことを理由に慰謝料請求(民法709条、710条)の対象となることが考えられます。 また、このような威圧的な言動を繰り返して町内会からの退会を妨害する行為は、その態様によっては、強要罪(刑法223条)や脅迫罪(刑法222条)に該当する可能性もあります。 町内会は確かに近隣住民の生活にとって重要な役割を果たしてはいますが、その利益を享受するかどうかは住民個人が自分の意思で決めるべき問題です。 昨今は町内会の加入者が減少傾向で、町内会活動に支障が生じることも少なくないようです。 しかし、だからといって、半ば脅すようにして退会を妨害するのは逆効果で、かえってトラブルを招き、他にも退会希望者が出てくるリスクがあります。 町内会活動を盛んにするためには、住民が加入したくなる魅力ある町内会にするための議論をするべきでしょう。 【プロフィール】 寺林 智栄(てらばやし ともえ)弁護士 NTS総合弁護士法人札幌事務所 2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。