【アジア】【年始特集】有望投資先、今年もインド 成長性期待、中国リスク回避も拍車
インドの存在感がさらに拡大──。アジア太平洋地域に進出する日系企業の駐在員らに聞いた「2025年のアジアで最も有望な投資先」は、2年連続でインドが1位となった。回答者全体の38.8%を占め、理由は今回も「市場に成長性があるから」が圧倒的に多かった。また、米トランプ政権の再登場で中国経済のさらなる減速が懸念される中、インドに期待する声が強まっていることも見て取れた。 インドを最も有望な投資先とする回答者の比率は、24年(35.8%)からやや上がった。理由(複数回答)は、「市場に成長性があるから」(回答者の95.8%、以下同)が24年結果(95.5%)とほぼ同数。次いで「労働コストが安いから」(23.8%)、「生産拠点として有望だから」(16.5%)の順となった。 「人口が多く、内需主導による成長の余地が大きい」(ベトナム/貿易・商社)と、強みである世界一の人口とそれに伴う市場規模に加え、「政府主導でのインフラ整備が進んでおり、製造業や物流分野の改善が期待できる」(オーストラリア/鉄鋼・金属)、「半導体産業に力を入れていく兆しがあり、期待できる」(マレーシア/石油・化学・エネルギー)など、インフラや産業面でも力強さを感じる場面が増えているようだ。 また、従来はインド進出というと先行投資のイメージが強かったが、「親会社のインド向け売り上げが急増している」(中国/繊維)、「毎年10~15%の売り上げ成長をほとんどのメーカーが達成している認識」(タイ/貿易・商社)など、業績を上げ始めているという意見も見られた。 加えて、今年は1月に第2次米トランプ政権が発足、中国に対して高関税など厳しい姿勢で臨むとみられ、中国の景気がさらに厳しい局面に置かれると予想される。このためインドが「中国経済に代わり、世界経済を動かす起爆剤になりうる」(インドネシア/運搬・倉庫)、「米中対立により、中国からの生産拠点の移転先になりつつある」(タイ/四輪・二輪車・部品)など、「リスク回避先」になるとの期待感も少なくなかった。 もちろん、法制度や税制などで依然不透明な部分はあるものの、モディ政権下で投資環境は年々改善されたとの評価もある。今後は「日本企業が積極進出しており、ビジネスをしやすくなる環境が徐々に整ってくる」(中国/機械・機械部品)という予想図がより確実性を増していくことも考えられる。 ■ベトナムは「コスト」と「生産拠点」 2位のベトナムは回答者全体の26.4%で、こちらも24年(23.6%)よりやや上昇。23年まで8年連続1位を記録した時のような勢いはないものの、それでも依然4分の1程度の支持を集めている。 ベトナムの特徴は、「労働コストが安いから」(51.4%)と「生産拠点として有望だから」(55.9%)の2点を理由に挙げた人の比率が他の国・地域より高いこと。下位のバングラデシュを除くと、唯一いずれも5割を超えている。 「東南アジア諸国連合(ASEAN)では最も労働コストが安い」(インドネシア/四輪・二輪車・部品)、「物作りに適した能力の人材がいる」(中国/機械・機械部品)、「まじめで勤勉なお国柄、安い労働コスト。物作り拠点として発展していくと推測」(中国/電機・電子・半導体)など、生産拠点としての役割に対する評価は相変わらず高かった。 一方で、「市場に成長性があるから」(59.9%) を挙げる人も24年(62.1%)並みに多かった。「若い世代の人口が多い」(中国/建設・不動産)など、この点でも期待を寄せる声は少なくない。 ■インドネシア、中国は市場規模評価 3位は24年と同じくインドネシア(7.5%)だったが、回答比率は10.4%から1桁台に転落した。有望視する理由は「市場に成長性があるから」が94.0%で、「人口ボーナスがある」(インドネシア/四輪・二輪車・部品)など世界4位の巨大人口に期待する向きは多い。 また、インドネシアは45年までにジャカルタからカリマンタン島のヌサンタラへの首都移転を完了させる計画で、「首都移転に向けての投資や事業機会の拡大を期待」(フィリピン/建設・不動産)と評価する駐在員もいた。 中国は6位と24年の5位からさらに1つランクを落とし、回答比率は3.1%にまで落ち込んだ。ただ、中国国内にいる駐在員からは「景気は低迷しているが市場は大きい。成長余地はある」(電機・電子・半導体)、「成長性は減速しているが、市場規模が大きいためチャンスはある」(電機・電子・半導体)といった声も。また、「課題は多いが、それを克服するための政策発令が期待できる」(機械・機械部品)など、共産党政権ならではの強いリーダーシップによる状況改善に期待する意見もあった。 ■バングラは政変後を見極め その他の国・地域を見ると、4位のタイ(4.0%)は、「進出した日系企業はほぼ安定期を迎えている」(タイ/電機・電子・半導体)、「親日国で仕事がやりやすい」(中国/電機・電子・半導体)などその安定性を評価。5位のフィリピン(3.3%)は、「定性的に見ると、内需主導の長期的な経済成長の継続を実現する確度が高い」(フィリピン/四輪・二輪車・部品)などが理由として寄せられた。 22年に13位(0.7%)、23年に9位(1.4%)、24年は7位(1.9%)と着実に順位を上げていたバングラデシュは9位(1.3%)に落ちた。学生らによる反政府デモが激化し、約15年にわたり君臨したハシナ首相が24年8月に退陣、インドに逃亡するなど一連の政変が駐在員の心理に影響した可能性もある。 ただ、動向をウオッチしている企業からは「政変の影響を見極め中の企業が多い一方で、産業が根付きつつあることと、若年労働者の多い人口ピラミッドなどは魅力的」(香港/貿易・商社)という指摘もあった。情勢が落ち着けば、再び注目度が高まる可能性は十分ありそうだ。