アジアのウェルスマネジメント期待の星、UBSで困難な仕事に挑む
(ブルームバーグ): ヤン・ジン・イー氏は前職を半年足らずで辞め、プライベートバンキング分野で最も困難な職務の一つを引き受けた。UBSグループとクレディ・スイスのアジア事業を統合するという仕事だ。
UBSのアジア太平洋ウェルスマネジメント共同責任者に就任してから約10カ月がたった今、ヤン氏は成果を上げている。
同氏の指揮下で昨年7-12月(下期)に新規顧客資金の純流入は140億ドル(約2兆1260億円)近くになったと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同氏はクレディ・スイス出身のUBSの投資銀行バンカーとのつながりを活用して、超富裕層の顧客からビジネスを獲得している。同氏が担当する分野の一つであるクレディ・スイスの東南アジア事業は、今年の早い時期に両行の合併以来初めて収支均衡を達成した。
ヤン氏の仕事ぶりを知る関係者11人とのインタビューによると、これはポジティブなスタートだ。11人は情報の非公開を理由に匿名を条件に語った。ヤン氏はアジアで最も知名度の高いバンカーの一人。
ただ、課題も残っている。一つはインドとオーストラリアで事業を構築することだ。両国のウェルス市場は活況を呈しており、その重要性はますます高まっている。二つ目は、合併後のレイオフとコスト削減の管理。そして最大の課題は、2つの極めて異なる企業文化を融合させることだ。
クレディ・スイスに19年間在籍した元プライベートバンキング幹部、マーティン・クンズラー氏は「これは大変な仕事だ」とし、ヤン氏が「自身の能力を証明しなければならない」と述べた。
UBSは2023年3月、クレディ・スイスを30億スイス・フラン(約5040億円)で買収すると発表した。ヤン氏は同年1月に約20年間在籍したクレディ・スイスからドイツ銀行に移籍していた。買収が同年6月に完了する直前には、ドイツ銀のアジア太平洋ウェルス責任者として戦略を表明した。
そのため、ヤン氏がUBSからのオファーを引き受け、UBSに29年間在籍するベテランであるエイミー・ロー氏と共に昨年6月にアジア太平洋共同責任者に就任した時は、多くの人を驚かせた。香港在勤で60代前半のロー氏は大中華圏を担当し、シンガポール在勤の49歳のヤン氏はその他の地域を統括する。