「原作未登場なのになぜ?」『ドラゴンボール』“伝説の超サイヤ人”「ブロリー」人気のワケに迫る
■絶望の様子しか描写されない劇場版作品
1993年に登場して以来いまだにブロリーがファンの間で人気なのは、やはりその驚異的な強さにあるだろう。 力の暴走を恐れたパラガスにコントロール装置を着けられているため、普段は全く覇気がなく弱々しい見た目をしているが、ひとたび超サイヤ人に変身すると、その筋肉は数倍に膨れ上がり、残虐性をむき出しにして悪魔の如く襲い掛かってくるのだ。 超サイヤ人状態でも「気が高まる……。溢れる……!!」と、無尽蔵のタフネスを見せるほか、飛び上がるだけで崖が崩れたり、悟空を殴りながら崖を掘り進めたりなど、戦闘においては圧倒的。また『ドラゴンボール』らしいド派手な演出ばかりなのにもロマンを感じてしまう。 ちなみに、ブロリーは『ドラゴンボールZ 燃え尽きろ!!熱戦・烈戦・超激戦』において、およそ70分の上映時間のうち、67分ごろまでいっさいのダメージを負っていない。“さすが伝説の超サイヤ人だ”と思えるような屈強さを見せつけるのだ。 極めつけはパラガスを殺害したあとに放った「この俺が星の爆発くらいで死ぬと思っているのか?」というセリフだろう。筆者は子どもの頃に本作を視聴したのだが、彼の強さを象徴するようなこのセリフや立ち回りを見てファンになってしまった瞬間でもある。 名シーンばかりで語るに足りないブロリーの戦闘力だが、『ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』では、悟空・悟飯・悟天の親子3人によるかめはめ波で太陽まで吹き飛ばされ、消滅してしまう。 本作でも終了間際まで暴虐の限りを尽くしているが、最後は劇場版にしか登場しないブロリーの儚さが描かれているようで、唯一無二の魅力を感じずにはいられない。
■24年ぶりに悟空らの前に再び降臨
『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』にて、クローンである「バイオブロリー」が登場するが、筋骨隆々の勇ましいブロリーは劇場版13作目以降長らく登場していなかった。 その後はゲームなどさまざまな媒体で『ドラゴンボール』界最強の称号を欲しいままにしていくのだが、2018年に公開された映画『ドラゴンボール超 ブロリー』にて映像作品としては24年ぶりに再登場を果たすこととなる。 ブロリーに関連する映像作品で、原作作者である鳥山明さんが脚本からかかわったのは初となる本作。『Z』版のブロリーとは異なる存在であるため、悟空たちも初めて対峙したことになっている。 秘められた潜在能力の高さや、パラガスのコントロール下にあることは変わらないが、本人に悟空とベジータに対する復讐心や邪悪さはなく、普段は温和な性格をしているのが印象的だ。戦闘慣れもしておらず、過去作と比較しても純朴な描写が多いため、まるで子どもを見ているような目線で見てしまうのが本作のブロリーだ。 戦闘開始時は悟空やベジータのほうが格上のため、苦戦するブロリー側に感情移入してしまった人も多いのではないだろうか。だが、戦いのなかで急速に成長していき超サイヤ人に覚醒した際には、超サイヤ人ブルーの悟空とベジータ2人でも手が付けられなくなるほどの強さとなるのである。 本作特有の黄緑色のオーラを纏うブロリーがとにかくカッコ良く、終盤では「もっと暴れてくれ!」と、ついアツく応援したくなってしまう不思議な魅力を持つ。 過去作のような視聴者に絶望を与え続けるブロリーの絶対的な邪悪さにも惚れ惚れしてしまうが、『超』での人間的な一面を持つブロリーが悟空やベジータと本気でぶつかり合う様子も非常に爽快で、作品によって違った魅力を感じられるキャラクターのように思う。『Z』では殺戮を楽しむ絶対強者、『超』では無限の伸びしろを秘めた純粋な青年と、まったく違った一面を見せてくれる。 「魔人ブウ編」の後の物語となる新作『ドラゴンボール DAIMA』では展開的にもブロリーが登場する可能性は低いが、これだけファンに愛されているキャラクターのため、また新たな形で再登場してくれる可能性に期待しても良いのではないだろうか。 ちなみに、大好評発売中のゲーム『ドラゴンボール Sparking!ZERO』では『Z』と『超』のブロリーがプレイアブルキャラとして登場している。ぜひゲームにて、ブロリーさながら暴れまわってみてはいかがだろう。
ハヤシラマ