ジャンルに特化することが吉? アイドルの個人SNS炎上で浮彫になる「生」で発信する難しさ
■フィルター越しではなく「生」で発信できるからこそ、今まで通りとはいかない
日本の芸能界は海外などのエージェント制とは違い、プロモーションやプロデュースなどをすべて事務所に「任せてきた」歴史がある。イメージについても事務所が守り続けてきたが、SNSによって、その「脳内」が見えるようになった。アイドルとしての姿を貫くこと。それがこの現代、どこまで通用するのだろうか。 「遠くで見るから美しくもあり、偶像として受け入れられるという歴史が続いていた。苦労や大変な裏側など、人間の生としての部分は見せない、または見せてもファンの動向を考えた発言をする。…これに関しては、旧ジャニーズ時代、私もテレビ雑誌などで彼らのインタビューを数多くこなしてきましたが、やはり“内側”を語ったコメントは喜ばれる。事務所チェックもありませんでしたが、だからこそファンがどのような言葉で喜び悲しむかは、ライターも編集も徹底的にリサーチした上で大丈夫であるものを発信していました。つまりオフショット的コメントであってもフィルターはしっかりかけていたのです。 これをSNSで「生」で発信すればファンがより喜ぶことも、より悲しむことも、その両面がむき出しになってしまう。ゆえに山下さんのように、内面を「神秘」とするのも得策。千賀さんのように自身が培ってきたプライベートの知識をジャンルに特化して、アイドルとはやや違う地平線で語るというのも新たな形として有効のように思います。いずれにせよ、FRUITS ZIPPERなどのヒットを見ても、“人としての部分は見せない”というアイドル本来の姿への原点回帰の機運は感じられます」(衣輪氏) とはいえ、「SNSをやらない」という選択肢はもはや難しくなっている。「Z世代の俳優などからは、むしろSNSを利用して趣味である音楽や特技の歌ウマなどを披露したオールマイティーな芸能人が今後強くなるという話も(衣輪氏)」あるそうなので、その上でエビデンス盛り盛りのジャンルに特化することも当然アリだろう。同時に自身の影響力を理解した上で立ち振る舞うことができるなら、そのテンションを維持するべき。SNSの発信を戦略的に練ることは今後、どんな人にとっても大切になる。 (文/西島亮)